社説

社説[那覇基地から中東派遣]なし崩しは許されない

2020年1月13日 09:49

 海上自衛隊のP3C哨戒機2機が11日、中東海域での情報収集活動のため那覇航空基地を出発した。隊員約60人がアフリカ東部ジブチを拠点に今月20日から活動する。県出身者6人も含まれている。

 河野太郎防衛相の派遣命令に基づくもので、2月2日には横須賀基地(神奈川県)から護衛艦「たかなみ」が出航、同月下旬から現地活動を開始する。派遣規模は合わせて260人程度という。

 米国とイランの対立で中東は緊迫した情勢が続いている。河野防衛相も「緊張が高まっている状況」と認め、偶発的な衝突に巻き込まれるリスクは消えない。

 これまで何度も指摘してきたが、海自の中東派遣には問題が多い。政府が中東派遣を閣議決定したのは昨年12月末だ。臨時国会の閉幕後で、国会での論議もほとんどないままである。

 哨戒機派遣も通常国会前で、既成事実づくりを急いでいるとしか思えない。なぜ国会論議を避けるのか。政治が軍事に優先する文民統制(シビリアンコントロール)の観点からもあってはならない。

 派遣の法的根拠は防衛省設置法の「調査・研究」である。防衛相の命令だけで、国会の事前承認を必要としない。「調査・研究」名目で海外派遣されればなし崩し的に拡大されるばかりだろう。

 通常国会は今月20日に召集される。護衛艦の出発前である。閣議決定時と現在の中東情勢は一変している。国会論議を徹底し閣議決定の白紙撤回もためらうべきではない。

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 米国とイランの対立を巡ってはイランが8日未明、米軍駐留のイラクの空軍基地など2拠点を十数発の弾道ミサイルで攻撃した。米軍によるイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害に対する報復だった。

 トランプ米大統領は反撃を否定。イランも米国に攻撃しないことを伝え、全面衝突の危機はひとまず回避された。しかし米国は新たな経済制裁を表明しており、不測の事態がいつ起きてもおかしくない状況に変わりはない。

 イラン政府がウクライナ機を誤って撃墜したことを認めたため、抗議デモが発生し国内も流動化している。

 政府が現地情勢やリスクをどのように分析して海自を派遣するのか、国民に対する具体的な説明はない。共同通信社が11、12両日に実施した世論調査では中東派遣に「反対」が58・4%で「賛成」の34・4%を上回った。国民の理解が得られているとはとてもいえないのである。

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 安倍晋三首相はサウジアラビアなど中東3カ国を訪問している。海自の中東派遣に理解を求め、自制的な対応を促すためという。

 情報収集といっても軍事活動である。中東には親イラン武装勢力が各地に存在しており、海自が巻き込まれる恐れは拭えない。海自の派遣が中東情勢の不安定化の要因になるのを懸念する。

 日本の役割は同盟国の米国と伝統的な友好国であるイランの間に立ち、国際社会と連携して緊張緩和に向け両国を対話の道に導くことである。

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