政府は、75歳以上の後期高齢者が医療機関の窓口で支払う医療負担について、2022年度までに一定の所得のある人を対象に2割に引き上げることを全世代型社会保障検討会議(議長・安倍晋三首相)の中間報告に明記した。ことし6月ごろにまとめる最終報告に向けて所得の基準など制度の詳細を詰める。

 高齢者にとって、消費税の税率アップに続く、医療費の負担倍増は家計を直撃する死活問題。受診控えによる重症化も懸念される。

 75歳以上の医療費負担は現在原則1割で、現役並みの所得(年収383万円以上)がある人は3割。1割負担は全体の9割以上になっている。

 国民1人当たりの医療費で、75歳未満は18年度で22万2千円だったの対し、75歳以上は93万9千円で4倍を超える。医療費は全体で約43兆円だが、うち75歳以上は約16兆円になっている。

 16兆円の医療費の半分は国や自治体が拠出し、75歳以上の人の保険料で約1割、現役世代の健康保険料で約4割を賄っている。

 団塊の世代が75歳以上になり始める22年以降、医療費のさらなる膨張が見込まれる。

 若い世代への負担をこれ以上求めることはできないとして、政府は高齢者の所得に応じた負担を求めた形だ。

 だが、75歳以上の多くの人が年金生活者だ。限られた年金の中から医療費を捻出している暮らしの中に、痛みを受け入れる余地はない。 

 医療機関にかかる頻度などの生活実態や家計に与える影響を十分に配慮し、低所得者も安心できるような制度設計が不可欠だ。

■    ■

 県内で生活に困窮する高齢者は少なくない。17年度の月平均給付額で、厚生年金で12万5338円。国民年金は月5万2134円で47都道府県の中で最も低くなっている。

 離島やへき地に住む高齢者には、航空機や船舶、バスなど通院するための交通費の負担が重くのしかかる。所得の基準は全国一律ではなく、離島県ならではの特殊事情も考慮して議論すべきだ。

 厚生労働省の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会では医療費の負担増について、多くの委員から「生活への影響を十分に配慮すべきだ」などの慎重意見が出た。

 高齢者の生活に直結する問題だけに、沖縄県も実態を把握し、政府に対策を求める必要がある。

■    ■

 年齢を重ねれば、病気になったり、体に支障が出て病院にかかったりすることが多くなるのは当然のことだ。その生活の安心を支えるのが社会保障だ。

 「認知症の人と家族の会」の鈴木森夫代表理事は「社会保障は元々子育ても含めて全ての世代のものだ。『高齢者への給付を削って若い世代に』という発想がおかしい」と批判する。

 政府は世代間対立をあおるのではなく、内部留保をためこむ大企業や富裕層への課税強化、天井知らずの防衛費の見直しなどを含め、財源確保のための国民的議論を進めるべきだ。