【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】

「家族を想うとき」

 少し前、某社のネット環境が全国的に不具合になり、私の携帯も、会社のPCも全く使用できなくなった日があった。ニュースによると、大都市は大パニック。でも日本の端の沖縄で、私は超幸せだった。未読ゼロの受信ボックス、通話料を払っているのに鳴らない携帯。空気さえ澄んで見えたあの日。大きな声では言えないが、あれ以来、世の中からインターネットが消えてしまうことが、人類の幸せだと、ひそかに信じている。

 その思いを確固たるものにしたのがこの映画。インターネット普及の恩恵で、家から一歩も出ずに、ボタン一つで買い物ができる今の時代。本作が描くのは、ボタン一つで注文された商品を、薄給で届け続ける配達員たちの生活。身体も家庭もボロボロになっていく主人公の暮らしに、便利すぎる世の中への疑問を抱かずにはいられない。(桜坂劇場・下地久美子)

◇桜坂劇場で上映中。