行政協定の改定交渉で、外務省が米国に要求した57項目はほとんどが受け入れられなかった。米国による占領下の1952年2月に結ばれた行政協定は基地の管理について「米国が施設・区域の管理の権利、権力、権能を有する」と位置付け、日本の主権の弱さを象徴していた。外務省は「両政府の合意により定める条件で使用する」との改定を求めたが、地位協定は「米国は必要なすべての措置を執ることができる」と日本案を取り入れなかった。(政経部・銘苅一哲)

日米地位協定の調印までの経緯と改定を求める主な動き

行政協定と外務省の改定案、地位協定の比較

日米地位協定の調印までの経緯と改定を求める主な動き 行政協定と外務省の改定案、地位協定の比較

 米兵と同じように特権が認められる軍属の範囲は、行政協定が「軍隊に雇用され、勤務し、または随伴する」と幅広く認めていた。日本側が作成した文書は「軍隊に随伴しかつ雇用されている」と記載。「または」ではなく「かつ」として範囲を狭める案を提示したが、地位協定で文言は変更されなかった。

 行政協定は米国が基地を返還する際の原状回復の義務を負わないことが明記され、日本は「回復と補償の義務を負うべし」とした。この項目でも行政協定の表現が地位協定に引き継がれた。

 地位協定は民間の港や空港を米軍が使用する際、使用料の支払い義務を課していない。行政協定から引き継がれている内容だが、日本は改定交渉で「『施設(米軍基地)』にあらざる開港は入港料、着陸料を課すべし」としていた。

 米軍人、軍属が日本人に損害を与えた場合の慰謝料を巡っては、行政協定で加害者に支払い能力がないケースは想定されていなかった。

 日本は「加害者がすでに帰国、支払い能力を欠くなどの場合は米軍が慰謝料を払う」としたが、地位協定でもこうしたケースの対応を定める項目はない。