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「狂気」の空に怒りの絵 小学校の上から落ちる軍用機部品 米軍特権を阻めない地位協定

2020年1月20日 09:00

■骨抜きの主権国家 日米地位協定60年(1)

米軍ヘリの窓落下事故を描いた作品をバックに「狂気の沙汰としか思えない事故だった」と語る金城芳明さん=15日、宮古島市平良西里

普天間第二小学校のグラウンドに横たわる米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリの窓=宜野湾市提供

米軍ヘリの窓落下事故を描いた作品をバックに「狂気の沙汰としか思えない事故だった」と語る金城芳明さん=15日、宮古島市平良西里 普天間第二小学校のグラウンドに横たわる米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリの窓=宜野湾市提供

 日米地位協定が調印から19日で60年を迎えた。米軍の基地の管理権、米兵の公務中の事故に対する日本側の裁判権の放棄など多くの「特権」を認める協定は、行政協定から引き継がれている。二つの協定の改定交渉の経緯、協定の内容が原因で現在の沖縄で生じる問題点などを探る。

 1畳ほどのキャンバスに描いた油絵の真ん中には、金髪で青い目の子どもが見る側を指さす。その下で、サッカーをしている別の子どもたちの上には米軍のヘリコプターやオスプレイが飛び交い、窓枠や無数のガラス、米軍機の部品が降り注ぐ。

 宮古島市に住む画家の金城芳明さん(68)は2018年夏、17年12月に普天間第二小学校で起きた米軍ヘリの窓落下事故をテーマに「狂気-Daddy! come back」を描いた。

 宮古島で生まれ育ち、東京や沖縄本島で働いたこともあった。だが、米軍基地は本島中北部に集中するため自らの生活との関わりも薄く、取り立てて基地問題に関心があるわけではなく、作品のテーマにしたこともなかった。

 「そんな自分でも、あの事故はあまりに異常だと感じて作品にしようと思った」と半年かけて描き上げた。作品は1965年創立の「たぶろう美術協会」が主催する全国公募展で協会創設者の名前を冠した賞を受賞。作品を知った宜野湾市民から依頼され、市内の飲食店などで移動展示された。

 作品に込めた思いを「米軍機が学校の上を飛ぶだけでもおかしいのに、窓を落とすのは狂気じみている。自らも子どもの父親であるはずの米兵たちへ『あなたたちの子どももおかしいと言っている』というメッセージ」と語る。

 金城さんの目に「狂気」と映った米軍の基地の使用は、日米地位協定が根拠となっている。第3条は「米国は施設・区域の設定、運営、警護、管理のため必要なすべての措置を執ることができる」と規定。日本が米軍基地の運用に口出しをできない「排他的管理権」の特権を明記している。

 普天間第二小の事故後、市民からは米軍機の学校上空の禁止を求める声が上がる。

 だが、日本政府の対応は米軍機が学校の上空を飛んでいないかの監視や、窓が落下した運動場への避難施設の整備。飛行禁止という根本的な対応策は、地位協定による米軍の排他的管理権の壁に阻まれている。

米の既得権益守った「密約」 絶えぬ事故に住民「日本は植民地のよう」

 日米地位協定に盛り込まれた米軍による基地の管理権は、協定の前身となる米軍の占領下で結ばれた「日米行政協定」で、より明確に米軍の権力の強さが示されていた。

 「米国は施設・区域の設定、使用、運営、防衛または管理のための必要または適当な権利、権力、権能を有する」

 行政協定3条に記された管理権の文言は、戦争に敗れた日本と米国の力の差が如実に表れている。

 米軍の絶大な権力を認める行政協定に対する日本国内の世論の反発は根強く、1960年の日米安保条約と同時に改定され、地位協定へと名前を変えた。

 地位協定の締結によって主権の回復を国民に印象付けたい日本政府は、交渉過程で57項目の要求を米側に提示。管理権について「両政府の合意により定める条件で使用する」との表現に改めるよう米側に要求した。

 だが、管理権を含めて57項目はほとんど地位協定に反映されなかった。

 行政協定で「権利、権力、権能を有する」としていた表現は、地位協定では「必要なすべての措置を執ることができる」に。表現は変わっても、米軍の権限の大きさが読み取れる。

 さらに、日本は管理権の文言の変更に消極的だった米軍を納得させるため、日本は「表現を変えても実質は変えない」と伝達。事実上の密約とも言える「合意議事録」で米軍の既得権益が守られた。

■    ■

 合意議事録で骨抜きにされた地位協定の下で米軍が自由に基地を運用することで、普天間第二小のような事故は後を絶たない。

 普天間第二小の事故の6日前、宜野湾市野嵩の緑ヶ丘保育園の屋根に米軍ヘリの部品が落下した。

 宮城智子さん(50)は当時、娘が緑ヶ丘保育園、息子が普天間第二小に通っていた。保育園の保護者らでつくる「チーム緑ヶ丘1207」の会長を務め、政府に園上空の米軍機の飛行を禁止するよう求め続けている。

 要請に対し、政府は「気象条件などで決められた場周経路(飛行ルート)以外の飛行を余儀なくされる場合もある」との回答を繰り返す。そんな政府に「国民ではなく、『お友達』の米軍を守っている」との不信感は高まる一方だ。

 行政協定と地位協定を見比べた宮城さんは「あまり違いが分からない。両方とも日本が植民地のよう」と感想を語り、一言付け加えた。「日本が求めたような『両国の合意』があったら、少しはましな状況だったかもしれない」(政経部・銘苅一哲)

 

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