社説

社説 [施政方針と新基地] もはや破綻は明らかだ

2020年1月21日 08:18

 通常国会が20日召集され、安倍晋三首相が施政方針演説をした。

 安倍首相は「2020年代前半の海兵隊のグアム移転に向け、施設整備などの取り組みを進める。抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に、一つ一つ結果を出していく」と述べた。

 12年12月の第2次安倍政権発足後、通常国会の施政方針演説は8度目になるが、普天間飛行場の危険性、辺野古移設のいずれにも、触れないのは初めてである。

 昨年1月の施政方針演説は「辺野古移設を進め、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現していく」としていた。

 なぜ、「普天間」「辺野古」が消えたのだろうか。

 政府は昨年12月25日、新基地の完成までの工期を当初の8年から約12年へ大幅に延ばす計画見直し案を発表した。

 大浦湾側に広がる「マヨネーズ並み」といわれる軟弱地盤が水面下90メートル地点にもあり、改良工事は世界的にも例がない難工事になることが予想されている。

 政府は本年度内にも設計変更を県に申請する方針だが、玉城デニー知事は認めない構えだ。政府の工期は玉城知事の承認が起点であり、政府の計画通りにはいかない。仮に進んだとしても普天間返還は日米合意の「22年度またはその後」から30年代半ば以降にずれ込む公算だ。

 新基地建設で普天間の危険性除去という政府の論理が破綻しているのは明らかだ。普天間返還の後れに言及しないのは不誠実極まりなく、強行工事との整合性も取れない。

■    ■

 施政方針演説では、これまで取り上げたことがなかった海兵隊の米領グアムへの移転を強調している。

 海兵隊の移転は民主党政権時代の12年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画で沖縄に駐留する海兵隊約9千人をグアムやハワイなどへ移転させることが盛り込まれた。グアム移転を普天間移設とは切り離し、20年代前半に始めることを確認している。

 主力の第4海兵連隊を含む実戦部隊が移転し、沖縄に残るのは2千人規模の第31海兵遠征部隊(MEU)だけになる。同部隊を運ぶ強襲揚陸艦は長崎県佐世保に配備され、アジア太平洋地域で各国と共同訓練などを実施。1年の大半は沖縄にいないのが実態だ。海兵隊が沖縄に駐留する必要はないのである。

 海兵隊の主力部隊がグアムなどに移転するのに、海兵隊の新基地を造るのは常軌を逸しているというほかない。

■    ■

 総工費も当初の3500億円以上から2・7倍の約9300億円に膨らむ。工期と総工費がそれだけにとどまる保証は何もない。国民の税金である。こんな野放図な公共工事は直ちにやめるべきだ。

 安倍首相は14年に約束した普天間の5年以内に運用停止することを守らず、その後も普天間の危険性除去に向けた対策をとっていない。不作為としかいいようがない。

 政府が辺野古にこだわればこだわるほど、普天間の危険性が固定化される。国会で徹底した議論を求めたい。

 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気