◆[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](294)

イラスト・いらすとや

 わが国では生涯でがんに罹患(りかん)する割合は2人に1人といわれており、誰しもが罹患する可能性のある病です。

 がんの治療は大きく分けて手術療法、薬物療法、放射線療法がありますが、それぞれの治療にはさまざまな有害事象があります。手術を受けられる方、特に大手術、消化管手術では手術後しばらくの間、絶飲食となることや麻酔の管が装着された状態が続くことがあります。

 そのような場合、お口の中が乾燥することや唾液による自浄作用が低下して衛生状態が悪くなります。薬物療法では約半数近くで粘膜炎が起こります。また、頭頸部(けいぶ)領域の放射線療法でも同様に粘膜炎が起こります。特に重度の粘膜炎をきたした場合、強い痛みにより食事の摂取が困難となったり、精神的なストレスの増加によって治療に対する意欲を低下させたり、予定されている治療の変更や中止といった治療計画の遂行に支障をきたすことも少なくありません。

 一方、手術前にお口のケアが行われた場合、手術部位の感染、呼吸器感染などの術後合併症の発症を軽減することが示されています。したがって、患者さんが安心してがん治療を受けられることに対して、お口のケアの果たす役割は大きいと考えます。

 実際に歯科医院で行われているケアについてお話します。がんの治療期間中にお口の衛生状態が悪くなることや免疫機能の低下によって引き起こされる急性の炎症症状の予防処置(むし歯や歯周病)。薬物療法により生じる粘膜炎を最小限にするための専門的機械的清掃処置(口腔=こうくう=内細菌の温床となる歯石の除去、歯面の滑沢化)およびセルフケア(患者さんご自身で行っていただく清掃方法)の指導。お口の中の乾燥を防ぐための保湿指導などがあります。

 歯科医院で行われるお口のケアによりがん治療によって生じる有害事象を軽減させ、社会復帰を促進させる効果が期待できます。がん治療の予定が決まりましたらかかりつけ歯科医にご相談ください。               

              (金城尚典 歯科口腔外科クリニック 名護市