サトウキビ畑に囲まれて建つ1軒のプレハブ小屋から、低音で力強いシャモの鳴き声が響く。小屋の周りに設置されたケージでは鋭い爪で地面を踏みしめ元気に動き回る。ところが別のケージには、包帯を巻いた脚を引きずったり、羽根が抜けて赤い皮膚が見えたりする個体も。沖縄県糸満市在住の本田京子さん(43)は2017年から、けがをしたり遺棄されたりした鶏を保護している。多くが闘鶏で傷ついたとみられるシャモ。闘鶏を禁止する条例の制定を求め、沖縄県議会や糸満市議会に働き掛けている。(南部報道部・松田麗香)

「クックハウス」の前に捨てられていたシャモ(本田京子さん提供)

おとなしく抱かれるシャモをなでる本田京子さん=17日、糸満市

皮膚がただれ目をけがしたシャモ(本田さん提供)

袋に詰められ南部の農道に捨てられていたシャモ(本田さん提供)

本田さんが運営する保護拠点「クックハウス」で飼われているシャモ

「クックハウス」の前に捨てられていたシャモ(本田京子さん提供) おとなしく抱かれるシャモをなでる本田京子さん=17日、糸満市 皮膚がただれ目をけがしたシャモ(本田さん提供)
袋に詰められ南部の農道に捨てられていたシャモ(本田さん提供) 本田さんが運営する保護拠点「クックハウス」で飼われているシャモ

◆体中が傷だらけ

 市内で農地を借りて運営している本田さんの保護拠点「クックハウス」には現在102羽のシャモがいる。17年に名護市内の林道でけがをした個体を拾ったのをきっかけに、保護活動を始めた。最初に保護した個体は片目がつぶれ、頭部には穴が開くなど体中傷だらけの状態だったという。

 治療のため動物病院に連れて行った際、闘鶏に使われるシャモだと知った。フェイスブックに拾った経緯などを掲載すると、遺棄されたシャモの情報が次々寄せられるように。クックハウスの前には、袋に入れられたシャモが捨てられることもあった。

 クックハウスの運営は寄付を中心にやりくりしているが、保護する鶏は、劣悪な環境で飼育されていたためか寄生虫がいたり、重傷を負っていたりと治療が必要で、治療費の負担が大きいという。

 17日、クックハウスを訪れた糸満市議会の視察で「闘鶏は文化だという人もいる」と問われた本田さんは「賭け事のために命を粗末にする文化などない」ときっぱり答えた。

◆実態把握できず

 現在、全国で闘鶏が禁止されているのは東京や神奈川、北海道など5都道県。東京では、鶏同士を闘わせることや見せる目的で人を集めることが禁じられており5万円以下の罰金が科せられるなどの罰則がある。

 本田さんは昨年2月、県議会、12月に糸満市議会に闘鶏禁止条例の制定を求める陳情を提出した。闘鶏自体の禁止と、実施した人への罰則などを求めたが「実態が把握できない」ことを理由に採択には至らなかった。

 本田さんが保護した鶏を診察するNPO法人「どうぶつたちの病院沖縄」の長嶺隆理事長は「頭部の骨がむき出しになっていたり目がつぶれていたりと重傷のシャモがほとんど」と説明する。ほかにもけがをしたシャモが連れ込まれることがあるといい、「文化だと主張するなら、最後まで責任を持って飼うべきだ。治療せず放置するのも遺棄するのも違法」と話した。

 本田さんによると、闘鶏は私有地の畑や民家の敷地内で実施されていることが多いという。「人目に付かない場所ではあるが、シャモは声が大きく、隠すのは難しいはず。警察が本腰を入れて取り締まってほしい」と切望する。今後、県内の各市町村議会に、条例制定を求めて陳情を提出する予定だ。