80分に設定した時計のタイマーを押し、問題文を読み始める。合否が懸かっていないのにどこか身が引き締まる。20数年前の懐かしい記憶がよみがえってくる

▼最後の大学入試センター試験。ネット公開された問題を自宅で解いてみた。理数系は歯が立たないと思い、国語と英語だけ。人生経験を重ね、学生時分とは試験問題の印象が違う

▼〈その人の心情として最も適切なものはどれか〉。答えの選択肢を見て迷う。善悪併せ持つ人間は時に矛盾した言動を取る。深読みすれば答えはいくつも成り立つような気も

▼とはいえ、そこはマークシート。一つ選び黒く塗りつぶす。正答表を見て、即座に正確に自己採点できるのがいい。50万人超の答案はどう見るのか。センター前副所長の大塚雄作さんが雑誌アエラで語っている

▼機械任せにせず、塗られたマークの濃淡や消し方で読み取れなかったり、二重マークと判定されたりした場合は人の目で確認する。誰もが等しく受験できる環境を守ってきた。「31年積み上げたノウハウは文化遺産と言ってよい」

▼来年から新テストに変わる。民間試験や記述式問題は採点ミスなどの懸念から見送られた。あの大人数が一斉に受け、短期間で採点する試験で公平・公正さを期すなら、センター方式が最適では。遺産は守り継いでこそ価値がある。(西江昭吾)