恐怖に襲われるというのは決して大げさではない。住宅地上空を米軍機が昼夜問わず飛行するのを強いられている県民には陸、海にかかわらず沖縄のどこでも起こり得ることを実感させる事故だ。

 防衛省沖縄防衛局は米海軍のMH60多用途ヘリコプターが沖縄本島東沖180キロの公海上で「着水」したと発表した。ヘリは水没した。

 乗組員5人は航空自衛隊や海上保安庁、米軍に救助され、生命に別条ないという。

 ヘリは横須賀基地(神奈川県横須賀市)に拠点を置く米海軍第7艦隊の旗艦「ブルーリッジ」に所属している。

 県内では事故が起きた日から陸上自衛隊の離島防衛専門部隊「水陸機動団」(長崎県)と米海軍・海兵隊による共同訓練が始まっている。

 専門家は共同訓練との関連性を指摘する。同型機がホワイトビーチから米揚陸艦に搭載され、出港したのが確認されているからだ。

 ヘリはどんな訓練をしていたのだろうか。第7艦隊は「通常の訓練」と木で鼻をくくったような説明しかしていない。事故を起こしておきながら米軍の情報開示は極めて少ない。機体のトラブルなのか、人為的ミスなのか。

 同機にはエンジンが二つあり、一つが停止しても飛行できる。よほど危険性の高い訓練をしていたのではないか。周辺海域は船舶や漁船が航行し、危険極まりない。日本政府は米軍に事故原因の究明を強く働き掛け、再発防止策を公表するまで同型機の飛行を停止させるべきだ。

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 気になるのは防衛省と第7艦隊が広報文で「着水」としたことである。米軍は機体をコントロールして海上に降りる場合を「着水」と表現するという。

 機体が海上に落ち、水没している。現場の映像や写真を公開するなどして「墜落」と表現しなかった根拠を示してもらいたい。

 第7艦隊は「go down」と表現している。「(水中に)沈む、沈没する」「(空中から地面に)墜落する、衝突する」などの意味があるが、第7艦隊の日本語訳も「着水」だった。

 米軍事メディアは「crash(墜落)」と報じており、双方に事故を矮小(わいしょう)化する意図があったのではないか。

 思い出すのは2016年12月に名護市安部の沿岸部でオスプレイが墜落・大破した事故である。日米とも「不時着水」としていた。米メディアが端的に「crash」と表現しているのに、である。

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 今回の事故で明るみに出たのは、沖縄の近海で沖縄の米軍基地に所属していない軍用機が訓練していることである。沖縄では米本国からの外来機も頻繁に飛来している。

 国土面積の0・6%にすぎない沖縄に米軍専用施設の70・3%が集中しているといわれるが、目に見えない基地もある。20訓練空域と27訓練海域が張り巡らされ、事故現場近くにも訓練空域が広がる。

 米軍にがんじがらめにされた構造的欠陥であり、政府が米軍の訓練を含め根本的に見直さない限り、沖縄の負担軽減とは名ばかりである。