新型コロナウイルスによる肺炎拡大を受け、県内の観光事業者は、従業員の安全確保や感染拡大防止の観点からマスク着用を決めたり、検討したりする一方、顔が見える接客に重きを置き、積極的なマスク着用に踏み切れず、難しい選択も迫られている。

国際線到着ロビーで、マスクを着用して中国人観光客に対応するレンタカー業者=27日午後、那覇空港(下地広也撮影)

 中国客のキャンセルが出ている県内ホテルの経営者は、緊急時に備え、連絡体制やホテル内のアルコール消毒を徹底するなど感染予防策をまとめたマニュアルを作成した。だが、マスク着用は明記していない。

 「スタッフ全員がマスクを着用しての接客は、お断り文があっても、中国客だけでなく、他の宿泊客にも不安や嫌な思いを与えかねず、せっかくの沖縄観光を楽しむことができない」と説明する。また「スタッフの安全確保も重要なので、マスク着用は自己判断に委ねている」と話す。

 観光客の送迎を担うタクシー会社も難しい判断を迫られている。

 沖東交通では、「顔の見える接客」を基本としており、マスクの着用は原則禁止となっている。ただ、観光客と近い距離で接する運転手の安全を考慮し、社内ではマスク着用の議論が挙がる。

 東江一成社長は「全ての乗客がウイルスに感染しているわけではない。かえって不快な思いをさせる可能性がある」と不安要素を挙げる。「ただ、乗務員の安全が第一。マスク着用も検討しなければならない」と対応の難しさを話した。

 第一交通産業は、マスク着用を運転手に一任している。

 那覇空港では、施設内のテナントへ従業員のマスク着用を推奨している。警備員や清掃員の着用は義務化した。

 中国系航空会社の搭乗手続きなどの地上業務を担う日本航空(JAL)は27日、従業員の安全を確保するなどの観点からマスクを着用した接客を決めた。

 企業で対応が分かれることについて沖縄観光総研の宮島潤一代表は「顔を見せる接客はサービスの基本だ。しかし、従業員への感染や、拡大を防ぐ上でマスク着用を徹底する必要がある」と指摘する。その上で「やむを得ない事情を丁寧に説明し、理解を求めた上で、接客することが大切だ」と強調した。