オーバーツーリズムを防ぐ新たな試みを、手付かずの大自然とここにしかいない生き物たちを守る「西表ルール」の確立につなげてもらいたい。

 今夏の世界自然遺産登録に向けて、県は西表島に入る観光客の数を、年間約33万人に制限することを決めた。夏場のピーク時も1日当たり1230人の上限を設ける。

 登録により観光客の増加が予想されるためで、住民生活に影響がでないよう、水道供給量を基にはじきだした数字だ。県の観光管理計画に盛り込み、登録の可否を判断する国際自然保護連合(IUCN)に提出する。

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が、自然遺産候補地として登録を目指すのは今回2度目。

 前回、18年に「登録延期」となった際、IUCNが課題に挙げたのが「観光影響」「固有種の交通事故」などだった。特に観光については「西表では現在の重大な脅威であり、注意深く管理する必要がある」と指摘した。

 人口2400人余りの西表島を昨年訪れた観光客は約29万人で、30年前の2・5倍。ここ10年の平均が約33万人で、総量の基準値としている。

 11年に世界遺産となった小笠原諸島(東京都)は、登録後1年間で観光客が1・7倍に増え、絶滅危惧種の樹木が傷つけられるなどの被害が出た。

 オーバーツーリズムにより、自然環境が損なわれては元も子もない。

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 登録延期に際しIUCNが出した「宿題」に、花丸がもらえるかどうかは、入島制限の実効性にかかっている。

 ただ示された上限値はあくまで目標であり、強制力はない。

 昨年11月、日本自然保護協会などは、IUCNに対し、南西諸島の自然の脆弱(ぜいじゃく)さを指摘し、「過剰利用を防ぐための、より強力な手法の検討」を求めた。

 地元で自然保護に携わる関係者の中には、対策が後手に回らないよう、法規制に踏み込むべきだとの声もある。

 自然保護と観光のバランスをどう取るかは難しい問題で、苦慮している自治体は多い。

 だが忘れてならないのは、世界遺産登録は、優れた自然を未来に残すことが目的だということだ。西表島の観光はその貴重な自然の上に成り立っている。

 観光業者の積極的な協力によって、入島制限がきちんと守られることを望む。

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 IUCNが指摘した国の天然記念物イリオモテヤマネコの相次ぐ交通事故も待ったなしの課題である。レンタカーの増加など観光形態の変化と輪禍死は無縁ではないからだ。 

 期待したいのは、西表島での観光ガイド事業に免許制を導入する竹富町の条例。この春施行される。

 島の宝を守っていくには、ソフト・ハード両面からの交通事故対策や、質の高いガイド育成が欠かせない。

 世界遺産を継続的に支える総合的なルール作りを急ぎたい。