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[木村草太の憲法の新手](121) DV被害者の生存権保障 重要な民間シェルターの役割 国は十分な予算措置を

2020年2月2日 09:07

 1月20日、衆議院での施政方針演説で、安倍晋三首相は、「民間シェルター支援によるDV対策等」に取り組むと語った。2020年度予算案では(1)受け入れ態勢整備(2)専門的・個別的支援(3)切れ目ない総合的支援-といった先進的な取り組みが促進されるよう、新規に2億5千万円の事業費が盛り込まれた。

 DV被害は生存権(憲法25条)にも関わる大問題なので、検討しておきたい。

 以前にも紹介したが、昨年9月25日、内閣府男女共同参画局が発表した「配偶者からの暴力に関するデータ」によると、DVの相談件数は増加し続けている。

 配偶者暴力相談支援センターへの相談は、2002年の3万5943件から、14年には10万2963件となり、以降、10万件超で高止まりしている。また、警察へのDV相談も01年の3608件から、18年には7万7842件となっている。

 他方、婦人相談所が夫等の暴力を理由に一時保護措置をとった件数は減少傾向で、02年の3974件から、18年には3千件になった。

 なぜ、相談件数が急増する中で、一時保護の件数が減少しているのか。

 DV保護の専門家である戒能民江教授は(1)直前に身体的暴力を受けていなければ緊急性が認められないなど、一時保護基準のハードルが高いこと(2)携帯電話や喫煙・外出の規制などの厳しい規律(3)車いす利用者や精神障害・疾患などの特別事情への対応が不十分なこと-等を挙げている(NHK視点・論点2017年7月26日)。

 公的な一時保護所が十分機能を果たせない中、民間シェルターが柔軟な対応で、それを補ってきた。しかし、その運営状況は厳しい。

 昨年2月、内閣府男女共同参画局が行った民間シェルターのアンケートによれば、80%以上の施設が「財政的問題」、「施設・設備の問題」、「スタッフの不足」といった問題を抱えている。また、常勤職員のいる民間施設は60%に止まっており、常勤職員が社会福祉士や保育士など専門資格を持つ割合は、その68・4%にとどまる。

 内閣府は、この調査を基に、「DV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会」を開催し、報告書をまとめた。

 それによると、施設の維持や常勤職員の確保・育成には、公的支援が不可欠だが、安定的な助成を受ける例は少ない。市町村の予算措置が不足して、無償で民間シェルターに入所を依頼するケースもあるという。さらに、施設運営者や職員は、ボランティアが多く、高齢化で閉所する事例も後を絶たない。

 DVは人々の生存に関わる大問題であり、その被害者を保護する責任は国にある。DV被害者の保護を、民間の善意に依存するのはおかしい。また、地域間格差があってはならない。国は、国民の生存権を保障するために、十分な予算を付けるべきだ。

 民間シェルターには、これまでのノウハウの蓄積もあることだろう。それを生かして、公的な一時保護所を使いやすくするとともに、民間シェルターへの安定的な予算措置が不可欠だ。今回、計上された事業費が、継続・安定したDV対策につながるよう期待したい。

 (首都大学東京教授、憲法学者)

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