中東海域で情報収集に当たるため海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が海自横須賀基地(神奈川県)から現地に向け出航した。同じく海自のP3C哨戒機2機は1月に那覇航空基地を出発している。護衛艦は2月下旬、現場海域に到着する予定で、P3Cとともに本格的な活動を始める。

 閣議決定から出航までに中東情勢は大きく変動した。

 1月に入り、米軍がイラン精鋭部隊の司令官を殺害した。イランは米軍が駐留する空軍基地などを報復攻撃した。1月下旬にはイラクの米大使館敷地にロケット弾が撃ち込まれた。米国とイランの全面衝突は回避されたが、緊張状態は続いている。

 河野太郎防衛相は「米イランがこれ以上のエスカレーションを回避する意向を明確にしている」として「自衛隊が武力紛争に巻き込まれる危険性があるとは考えていない」との認識を示した。

 どうしてそう言えるのだろうか。中東各国には親イランのシーア派武装組織が多数存在する。偶発的衝突に巻き込まれる懸念は拭えない。

 海自の活動がタンカーの安全確保に本当に役立つのだろうか。護衛艦の活動はオマーン湾とアラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側の公海である。イランへの刺激を避けるため、同国と接する要衝のホルムズ海峡やペルシャ湾は含まれていない。

 政府は米主導の有志連合とは一線を画した「独自派遣」と位置付けるが、バーレーンの米中央海軍司令部に1等海佐を派遣し米軍と情報交換する。有志連合の一員とみなされてもおかしくない。

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 中東派遣の閣議決定は臨時国会が閉幕した後の昨年12月。河野防衛相の派遣命令は国会閉会中の1月。

 閣議決定では国会報告を明記しているが、菅義偉官房長官は決定直後に全国会議員への文書の配布で報告としている。国会軽視も甚だしい。

 政府が自衛隊派遣の根拠にしているのが防衛省設置法の「調査・研究」である。国会承認が必要なく、防衛相の命令だけで可能だ。

 所掌事務などを定めた防衛省設置法を海外派遣の根拠とすれば、自衛隊のいかなる行動にも適用でき、国会承認が要らないため海外派遣が簡単にできることになる。本来なら閣議決定前に国会で徹底論議すべきだったのだ。「世界中、どこでもいつでも海外派遣できる先例にならないか」(公明党参院議員)と与党からも懸念が出るのは当然である。

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 不測の事態に巻き込まれた場合の自衛隊員の安全が気掛かりだ。日本籍船が攻撃されれば防衛相が首相の承認を得て海上警備行動を発令する。正当防衛、緊急避難の範囲で武器の使用が可能になるが、即座に手続きが行えるのか疑問だ。日本人が乗る外国籍船は攻撃する船に護衛艦を接近させたり、警告音を発したりして対応することしかできない。逆に護衛艦が攻撃を受けることにならないか。

 自衛隊員の安全と活動の効果に疑問符が付く派遣と言わざるを得ない。疑義と不安は膨らむばかりであり、早期に撤収させるべきである。