7日に定年を迎えるはずだった東京高検の黒川弘務検事長(62)について、政府が半年間延長させる人事を閣議決定した。黒川氏の定年延長には、次期検事総長に就任させる官邸の思惑があるようだ

▼検察官の定年は検察庁法に基づき、検事総長が65歳、それ以外は63歳と定める。延長の規定はない。森雅子法相は国家公務員法を用いて「重大かつ複雑な事件の捜査、公判に対応するため」と国会答弁したが、検察官に適用できるのか疑問だ。脱法の奇策との声もある

▼IR汚職事件や昨年夏の参院選を巡る公選法違反事件を捜査している検察の人事に、官邸が介入することは権力の乱用とも言える。安倍政権はこの禁じ手を何度も使ってきた

▼2013年には、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈を見直すため、「憲法の番人」と言われた内閣法制局長官に、法制局での勤務経験がない行使容認派を起用した。独立性が求められる組織の人事の私物化は、どこまで広がるのか

▼検察庁は政権中枢の腐敗を摘発してきた歴史を持つ。検察トップの人事介入を許した検察自身の罪も重い

▼かつて「ミスター検察」と呼ばれた故・伊藤栄樹さんは「巨悪を眠らせるな、被害者と共に泣け、国民に嘘(うそ)をつくな」と語っていた。権力を監視する側が政権に操作されるなら、国民からの信頼は地に落ちる。(吉川毅)