酒に酔った女性に性的暴行を加えたとして準強姦(ごうかん)罪(現・準強制性交罪)に問われた会社役員の男性に、福岡高裁は一審の無罪判決を破棄し、懲役4年の実刑を言い渡した。

 一審判決が強く記憶に残っているのは、同意がないにもかかわらず男性が同意があったと思い込んだから無罪という理不尽さからだ。被害の実態や女性が負った傷を考えれば、当然の結論である。

 被告は2017年、福岡市の飲食店で女性に性的暴行を加えたとして起訴された。女性はゲームに負けた罰として、テキーラを数回一気飲みさせられていた。

 準強姦罪は、抵抗することが著しく困難な「抗拒不能」を要件としているため、争われたのは次の2点だ。

 「女性が酔って抵抗できない状態だったか」「被告がその状態につけ込んだか」

 一審は女性が酔って抵抗できない状態だったと認めている。しかし女性が何度か声を発していたことを根拠に「同意と誤信した」とし、抵抗できない状態につけ込んではいないと判断した。

 これに対し高裁は、大量に酒を飲み、眠ったまま吐く女性の姿を被告が見ていたことから「抗拒不能状態を認識していたと当然推認できる」とし、無罪判決を取り消した。「被害者の肉体的・精神的苦痛は大きい」と量刑の理由を説明している。

 事件から何年たってもフラッシュバックに襲われることが多い被害である。判決で傷が癒えるわけではないが、前に進む一歩になればと思う。

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 この事件の一審判決は、性犯罪に対する司法判断に抗議する「フラワーデモ」のきっかけの一つになった。

 性暴力を許さないとの意思を示す各地のデモで上がっているのが、刑法そのものの不備を指摘し、見直しを求める声だ。

 強制性交罪の成立には被害者の抵抗を著しく困難にする「暴行・脅迫」が要件になっている。準強制性交罪は「抗拒不能」が要件である。

 だがフラワーデモなどで被害者が語っているように、現実には、怖くて声が出なかった、殺されると思い動けなかったとのケースは少なくない。

 法務省が昨年実施した犯罪実態調査で、性的事件の申告率は14・3%にとどまっていた。認定のハードルが高いため、訴えるのを最初から諦めてしまうケースが多いとされる。

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 17年施行の改正刑法には、20年をめどにした検討が盛り込まれている。今年がその見直しの年だ。 

 既に性暴力被害者らでつくる団体は、意思に反した性交だと認識できれば処罰する「不同意性交等罪」の創設など、さらなる改正を求める要望書を法相に提出している。

 同意の有無の証明は難しいとの意見もあるが、英国やドイツなどでは暴行や脅迫がなくても同意のない性交は犯罪とする規定がある。

 「魂の殺人」といわれる深刻な性暴力被害をなくすためにも、見直し要求に向き合うべきだ。