クルーズ市場最前線

[長浜和也ITmedia]

 新型コロナウイルスの発生は、クルーズ業界にも大きな影響を与えている。海外に寄港、もしくは、出港して日本の港に一度に多くの人が上陸する大型客船に対して、不安を抱く人は多い。古来より感染力の高い病気は船旅の脅威であったのも歴史的事実ではある。

 しかし、それだけに、船、特に客船では感染症対策を重視しており、港湾医療機関による検疫制度とともに長年にわたって十分な対策を重ねてきた。今回は、主に日本発着クルーズを運航している客船会社に聞き取りをして、現在実施している新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を紹介する。

 なお、この聞き取りは1月31日から2月4日にかけて取材して得た情報をもとに構成しているが、新型コロナウイルスの状況は日々変化しつつあり、それに合わせて各国の対策、船会社の対策も更新されていることを留意していただきたい、

日本郵船

日本船籍の客船で最も大きいクルーズ客船「飛鳥II」

 所属する「飛鳥II」が現在改装でドック入りしており、クルーズ運航は実施していない(2020年春に復帰予定)。ただし、春に予定している改装後のクルーズ就航に向けて「新型コロナウイルス関連肺炎の発生に関する対応について」を発表している。

 それによると、上船日からさかのぼって14日以内に中国本土の渡航歴がある人の上船はできないとした。また、それ以外の上船予定者も健康質問票の提出を必須とし、上船受付時では検温を実施する場合があるとしている。

 なお、飛鳥IIでは09年に豚インフルエンザが流行した時期に、センサーによる検温を実施している(豚インフルエンザが小康状態となった時点で質問票による自己申告に戻した)。

 また、平常時のクルーズでも航海中に船内でインフルエンザなどの感染症が発生した場合は、船医の診察と指導の下、症状が緩和するまで寄港地停泊中であっても自分の船室から出ないように指導する。

 帰港したときは、他の船客と時間をずらして下船する。また、下船後の現地医療機関との連携については、船員労働安全衛生規則第43条の定め(船舶所有者は、船内において救急患者が発生したときは、必要に応じ、医療機関との顕密な連携を保ち、その指示に従って適当な措置を講じなければならない)に準拠して対応すると説明している。

商船三井

にっぽん丸は、幸いにして終日航海が続く太平洋横断クルーズに就航しているため、新型コロナウイルスに感染する可能性は低い

 所属する客船「にっぽん丸」は、1月16日に横浜港を出港後(この時点で通常の体調管理チェックで異常はなかった)、長期の太平洋横断クルーズ(途中ハワイとメキシコに寄港するのみ)に就航しており、2月中旬に予定している日本帰港後は改装工事のためドック入りが決まっている。

 そのため、船内の防疫体制は従来ある「新型インフルエンザ発生対応マニュアル」に沿った対応をすると説明している。

キュナードライン

所属する「クイーンエリザベス」はその知名度もさることながら、近年日本発着クルーズで日本の港を訪れる回数も増えている

 キュナードラインでは、2月3日時点における対策を次のように述べている。

 まず、米国疾病対策予防センター(CDC)および世界保健機関(WHO)と連携して、社内の医療専門部署による船舶のスクリーニング検査、予防、管理措置を全ての所属客船で実施している。また、過去14日以内に中国本土(湖北省を含む)を訪れた船客と乗員は、呼吸器疾患の症状の履歴に関係なく上船できない。

 船客が上船する全港では、全ての船客を対象に事前搭乗審査を実施し、必要に応じてさらなる医学的検証を実施する。さらに、呼吸器疾患の症状があり、船内にある医療センターを訪れた船客と乗員は、コロナウイルスのリスク検証を行い、必要な措置をとるとしている。