地面すれすれに窓がある狭い家から丘の上の大邸宅へ。失業中の貧しい一家が別人になりすまし、富豪に寄生していく物語は格差社会の実相を娯楽性を伴って描く

▼韓国映画「パラサイト 半地下の家族」は英語以外で初めて米アカデミー賞の作品賞に選ばれた。カンヌ国際映画祭の最高賞に続く快挙。米国と欧州での高評価に「格差を自国の課題と感じる先進国が増えたことの現れ」とみる識者の分析を全国紙で読んだ

▼日本も例に漏れない。かつて「一億総中流」と呼ばれた。貧富の差はあるにせよ、多くの人は自らの生活水準を中程度と感じた。なんと牧歌的な時代だったか

▼所得の不平等さを示す指標「ジニ係数」でみると、戦後の高度経済成長で格差は縮まり、1980年ごろ底を打つ。そこから反転し40年。今や人々は豊かさと貧しさを如実に感じる。社会学者の橋本健二さんは「もはや格差社会ではなく、階級社会だ」と説く

▼橋本さんによると、富裕層と貧困層という両端の層が世代間で受け継がれる傾向が近年強まっているという。生まれながらにして、その先の可能性が狭められるほど理不尽なものはない

▼映画「パラサイト」の主人公一家は奇想天外な謀略を巡らせ、華麗なる転身を遂げる。そんな離れ業を使わずとも、地道に努力すれば報われる社会でありたい。(西江昭吾)