海の男たちの命がけの現場から生まれた漁師歌をバックに聞きながら、不器用な生き方もまたよし、と肯定してもらったような温かさに包まれる。
舞台はイギリスのコーンウォール地方の港町。レコード会社に勤めるダニーは旅行中に目にしたフィッシャーマンズ・フレンズの浜辺ライブに魅せられる。レコーディングの話を持ちかけるも仕事が一番と誰も乗ってくれない。
彼らの歌は自らを鼓舞するものであり、明日をもしれない海の上で家族を思って歌うものだったのだ。
年長者たちのボーイズバンドの歌声は、朗々としておおらかで、潮の香と風をはらみながら聴くものをとりこにする。
土地に根差し、海を畏れ、家族を愛した男たちの歌声がしばらく耳を離れない。
(スターシアターズ・榮慶子)