中国への渡航歴がない人の感染が相次いで確認されるなど、新型肺炎を巡る動きは、新たな局面に入っている。

 厚生労働省は13日、新型コロナウイルスによる肺炎で神奈川県在住の80代の女性が死亡したと発表した。国内で感染者が亡くなったのは初めてだ。

 かつて流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)に比べ重症化しにくいとの見方もあるが、高齢者などにとっては、治療が難しい深刻な感染症だということが改めて浮き彫りとなった。

 同日、和歌山県湯浅町では、病院に勤務する50代の男性外科医の感染も確認されている。医師の感染判明は初めてで、この病院では外科医と接触した可能性のある同僚医師と患者にも肺炎の症状が出ている。

 さらに千葉県では20代の男性会社員の感染が分かった。

 これまでの国内感染例との大きな違いは、いずれも発症前に中国への渡航歴がなく、中国から来た人との明らかな接触歴もなかったことだ。

 国は国内で流行が広まったとの判断は示していないが、日本感染症学会などは「既に街の中で散発的な流行が起きていてもおかしくない」との見解をまとめている。

 感染経路のはっきりしない症例がこれだけ続いているのだから、新たな段階に入ったと受け止め、重症化を見据えた医療整備に力を入れるべきだ。高齢者が暮らす施設の防御レベルを上げるなど、流行拡大を前提に体制強化を図る必要がある。

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 新型肺炎の拡大を受け、厚労省は14日、滞在歴によらずウイルス検査が受けられるよう対象者を拡大する方針を明らかにした。現行の中国湖北省や浙江省と関連があった場合という制限を取り払うという。

 検査を実施できる施設も拡充し、1日当たり約300件だった検査能力を約1100件まで増やす。

 集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での異例の船内待機も、検査態勢が整わないのが理由の一つである。

 現状4~6時間かかるとされるウイルス検査の迅速化、簡易検査キット開発は最優先の課題だ。 

 閣議決定された緊急対策にも、検査キットやワクチン開発の促進が盛り込まれている。

 海外の研究機関とも連携しながら、官民で知恵を絞り開発を急いでもらいたい。

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 県内でも14日、60代の女性タクシー運転手の感染が判明した。女性は「ダイヤモンド・プリンセス」が1日、那覇港に寄港した際、下船した乗客4人を南部の観光施設まで案内している。その後、休みをはさみながら7日まで勤務したという。

 感染は新たなステージに入っており、県には感染者と濃厚接触した全員の検査実施を求めたい。

 ただ新型肺炎は感染者の多くが軽症で、冷静に行動することが大切だ。県民には今まで以上に手洗い、せきエチケットの徹底を心がけてほしい。