社説

社説[横浜港のクルーズ船]後手に回った政府対応

2020年2月19日 07:26

 新型コロナウイルスによる肺炎に対する政府の対応は、後手後手に回っていると言わざるを得ない。

 政府が18日、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗員乗客を19日から21日をめどに順次、下船させる方針を示した。検査で陰性と判明し症状がない人が対象になる。

 クルーズ船の感染者数は18日までに542人に上った。国内感染者616人の実に9割近くを占める。

 政府は「検疫」を理由に今月5日から約2週間、乗員乗客約3700人を船に待機させた。結果として、船内で感染が広がり、7人に1人の感染者を出すことになった。  クルーズ船には56の国・地域の人が乗船。不自由な生活を余儀なくされた人たちは会員制交流サイト(SNS)を通して、船内での窮状や感染への恐怖を発信した。

 海外メディアは「乗船者を取り囲む環境は感染の恐れの巣窟のようなもの」「ウイルスに汚染された巨大な入れ物に人を閉じ込めている」などと批判した。米ニューヨーク・タイムズ紙は「過去に例を見ない失敗」と糾弾した。

 国内の専門家から「今から思えば、症状のない人は検査せずに全員下船させ、2週間の自宅待機を頼むのが一番良かった」という指摘もあった。

 乗客らを長期間船内に隔離する対応が適切だったのか。船内での予防策は万全だったのか。政府の対応は妥当だったのか。今後、しっかり検証されるべきだ。

■    ■

 政府は17日、新型肺炎の「相談・受診の目安」を初めて公表した。

 風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続くか、強いだるさや息苦しさがある人は、各地の保健所に設置された「帰国者・接触者相談センター」に電話で連絡するよう求めている。

 国内感染者が520人にまで拡大していたタイミングでの受診目安発表は遅すぎる。

 加藤勝信厚生労働相は同日、ウイルス検査の能力を1日あたり3千件に増やす考えを示し、民間や大学からも協力を得ると発表した。

 検査態勢をもっと早く拡充していれば、クルーズ船での感染拡大は抑止できたのではないか。そんな疑問が残る。

 朝日新聞が実施した世論調査では新型肺炎への政府の対応を50%が「評価しない」と答え、「評価する」の34%を上回った。クルーズ船への対応も「適切ではない」が45%で、「適切だ」(39%)を上回った。数字は国民の多くが不満に思っていることを示す。

■    ■

 世界保健機関(WHO)は、新型肺炎の致死率が約2%と、比較的低いとの見解を示した。だがウイルスには解明できていない点も多く、予断を許さない。

 人類の歴史は感染症との闘いの歴史でもある。

 かつて今ほど自由かつ簡単に国境を越えられる時代はなかった。人の頻繁な移動に伴い、感染症はボーダーレスな地球規模の課題となった。

 政府は、国のレベルを超え、国際社会と情報を緊密に交換しながら、先手先手の対応に転じるべきだ。

 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気