社説

社説[「市中感染」の疑い]流行を見据えた備えを

2020年2月21日 07:25

 県内の新型コロナウイルス(COVID19)の感染が2日連続で判明した。

 新たに感染が分かった3人目の男性は80代の農業従事者。県内はじめ各地で感染拡大を引き起こしているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客を乗せたタクシー運転手らとの接触は確認されていない。他県同様、県内でも感染経路が不明な「市中感染」の段階に入った可能性がある。

 今後、感染が分かった一人一人の行動履歴や接触者などの追跡調査は、より困難になる。誰でも感染の危険性があるという認識に立ち、マスクや手洗い、消毒などの感染予防を心がけてほしい。

 県内で感染が分かった人のうち1人目と2人目は共にタクシー運転手だ。1人目はクルーズ客を45分間乗せて感染していたことから、当初、感染の危険性が高まる「濃厚接触」の基準は30分以上とみられていた。しかし2人目の運転手が感染したとみられる乗車時間は30分未満で、この基準は再検討の必要がある。

 県はクルーズ客を乗せた可能性のある運転手のリスト提供を県ハイヤー・タクシー協会を通じて回収していたが、2運転手とも漏れていた。現場の危機感は薄かったと言わざるを得ない。

 感染症は一般的に発症すると感染力が強まるため、初期の把握は感染拡大を防止する有効な手段だ。しかし今回リストから漏れた2運転手の行動履歴からは、発熱や倦怠(けんたい)感の症状が出た後も数日間受診していないことが分かっており、知らずに感染を広げた可能性がある。

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 ウイルス検査の拡充も必要だ。加藤勝信厚生労働相は新型コロナウイルスのPCR検査について18日から1日当たり3千件以上が可能となったことを明らかにしたが、北海道から沖縄まで各地で次々に感染者が出ている事態を見れば十分とは言えない。

 沖縄県内では1日当たり数人しか検査できず、県は検査対象者を症状のある人などに絞っている。クルーズ客を乗せたとしてリストアップされた約200人の運転手も、経過観察にとどめるほかない状況だ。

 感染症指定医療機関の体制も万全にしてほしい。ウイルスは温暖な気候や湿度に弱いと言われているが、県内では近年、夏場もインフルエンザが流行している。県内の感染症病床は24床で流行時は不足するかもしれない。体制不足で救えるはずの命を救えない事態は避けたい。

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 同船の乗客のうち、感染が確認され入院中だった神奈川県の80代男性と東京都の80代女性が死亡した。クルーズ客の死亡が確認されたのは初めて。2人は発熱などの症状が出た後に下船し入院していた。高齢者はリスクが高いとはいえ、船内という特殊な空間に客を待機させた国の判断に誤りはなかったのか。

 船内での待機日数が長引くほど感染者が増えていることを見れば、全ての感染者が待機前に感染していたとする加藤厚労相の説明は納得できない。事実を検証し次善の策につなげるべきだ。

 
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