大弦小弦

[大弦小弦]首里城と沖縄愛した漆芸家

2020年2月23日 08:36

 高温多湿な気候と強い太陽の光の風土が育んだ沖縄の漆芸。その真理を探究し、愛した漆芸家の前田孝允さんが逝った。83歳だった

▼焼失前の首里城の復元に約30年間尽くした。朱色地に金の龍や五色の雲が描かれた柱、螺鈿(らでん)や沈金(ちんきん)を施した調度品、「中山世土」などの扁額(へんがく)。史料が乏しい中、国内外を調査し完成させた。城を「赤瓦のふたをした巨大な漆の器」と呼び誇りにした

▼復元に際し尚家門中が依頼した螺鈿玉座は思い出深かったという。首里城のシンボルとして尚真王の肖像画を基にした。引き渡した12月25日は、共に漆芸に取り組む妻の栄さん(75)と、毎年「嫁に出したような」余韻を味わった

▼首里城焼失の報に接し、衝撃を受けた表情が忘れられない。肩を落としつつも、病院に詰めかけた報道各社の取材をすべて受け「改めて作る」と意欲を示した。妻にはこう語ったという。「発信してみなさんを安心させるのが僕の仕事」

▼玉座や扁額などのデザインや作業の様子を公開した写真集「金龍(きんりゅう)五色(ごしき)之(の)雲(くも)」も1998年に自費出版。県内の学校に贈ったのは次世代が活用できるようにとの思いからだ

▼匠は漆芸を通し、沖縄を、県民を愛したのではないか。写真集には92年の開園直前の深夜まで、正殿で最後の仕上げに当たる夫婦の姿もある。その背中に改めて心打たれる。(内間健)

 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間