社説

社説[検事長定年延長問題]解釈変更は後付け濃厚

2020年2月25日 07:57

 安倍晋三首相が法解釈の変更を唐突に言い出したため、つじつま合わせのため政府答弁がくるくる変更しているというのが実情ではないのか。

 政府が黒川弘務東京高検検事長の63歳定年を直前になって半年間延長することを閣議決定した問題である。

 人事院は1981年「検察官には適用されない」としていた。野党議員の追及に森雅子法相は詳細を知らないと答弁。人事院給与局長は政府見解を「現在まで引き継いでいる」としていた。

 政府の答弁が変わるのは、安倍首相が衆院本会議で、検察庁法よりも、国家公務員法の延長規定を優先させる解釈変更をしたとの答弁をしてからだ。法解釈を変更し、閣議決定したというのである。

 給与局長は1週間前の政府見解をあっさり撤回。驚いたことに「つい言い間違えた」ことを理由に挙げた。

 森法相は政府内の協議について内閣法制局、人事院と1月に協議。「異論はない」との回答を得て同29日に定年延長を閣議に諮ったと説明した。31日の閣議決定前に法解釈変更がなされなければ違法の疑いが強いからだ。

 森法相は「部内で必要な決裁を取っている」としたが、法務省と人事院は正式決裁を取っていないと食い違った。法務省は「口頭による決裁を経た」と発表し、森氏の答弁に合わせた。法解釈の変更で「口頭決裁」なんてあるだろうか。法務省が提出した法解釈変更の経緯を示した文書にも作成日の記載がなかった。

 本当に法解釈変更の手続きを経て閣議決定をしたのだろうか。疑念が拭えない。

■    ■

 安倍政権は閣議決定を乱発する。これまでできないとされてきた検察官の定年延長をできるとする重大な変更だ。

 本来ならば、国会で審議してしかるべきであるはずだのに、閣議決定だけで事実上法律を変えることは国会を軽んじるものだ。

 なぜ法解釈を変更してまで定年延長をするのか。国会で説明がなされているとはとてもいえない。森法相は「東京高検管内で遂行している重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するため」と説明したことがある。「重大かつ複雑、困難な事件」とは何か。何の説明にもなっていない。

 しかもなぜ黒川氏でなければならないのか。黒川氏に代わる人材はいないのか。はなはだ疑問である。

 法務・検察内部からも不満の声が上がるのは当然で、国民が納得できるはずもない。

■    ■

 自民党内からも疑問が出ている。石破茂元幹事長はブログで強い疑問を呈し「定年を延長する『特別の理由』とは何か、政府には説明する義務がある」と強調した。岸田文雄政調会長もNHK番組で政府の説明が変遷し、国民は納得していないとして「検察官への信頼を確かなものにするために説明しなければいけない」と指摘した。

 政府は黒川氏を検事総長に任命することは可能だとする答弁書を閣議決定している。

 時の政権が恣意(しい)的に法解釈を変更して検察人事に介入するなら「法の支配」は崩れていると言わざるを得ない。

 
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