格闘技ラウェイ2018年世界王者 渡慶次幸平さん(31)=豊見城市出身

「生まれた国が違うだけで、将来に差が出てはいけない」と話す渡慶次幸平さん=東京都武蔵野市の所属ジム

 世界で最も過激な格闘技と呼ばれるミャンマーの国技「ラウェイ」で2018年の世界王者に輝いた。プロ格闘家として拳を磨く傍ら、現地で出会った貧しい子どもたちのため、小学校再建に向けた募金活動に力を入れる。「生きがいをもらったこの競技と、ミャンマーに恩返しをしたい」。活動を通して伝えたいのは夢が持つ力だ。

 プロ野球選手に憧れ、糸満高校野球部では主将を務めた。しかし夏の県大会2回戦で、大嶺祐太投手(現千葉ロッテ)らを擁し甲子園に出た八重山商工に敗れ野球を断念。テレビで目にした故山本KID徳郁さんに刺激を受けて総合格闘技の道へ入った。

 19歳で上京後、アルバイトで生計を立てながら21歳でプロデビューを果たす。だが頭角を現すまではいかず、結婚を機に引退も考え始めた。27歳のある日、所属ジムの会長に呼び止められた。「こんな試合があるが、やってみないか?」と紹介されたのがラウェイ。バンテージを巻いただけの拳で殴り合い、頭突きや(急所である)金的への意図せぬ攻撃も認められ、勝敗はKOか引き分けだけ。過酷な格闘技への誘いだった。

 「ファイトマネーも良い。30歳までに芽が出なければ諦めよう」と決意し、飛び込んでみたものの「最初の1、2試合は死を覚悟していた」。それでも初勝利を足掛かりに自信をつけると、戦いぶりが評価され、18年世界大会へ出場。75キロ級で日本人2人目の王者に輝いた。

 喜びもつかの間、試合翌日の慈善活動で、ミャンマー最大の都市ヤンゴン郊外の小学校を訪れた際、その光景に言葉を失った。電気や水道がなく、床は雨で腐り落ち、窓もない小屋で読み書きをする子どもたち。貧しさから夢すら持てず、低賃金の仕事に就く親の仕事を受け継ぐことが当たり前だった。「自分も2児の父。この子たちのために何かできないだろうか」

 帰国後ラウェイ世界王者が小学校を訪れたというニュースが現地テレビで流れ、「日本人が見つけた学校」として募金が集まったことを知った。「自分にはそんな影響力があるのか」

 昨年末、日本のテレビ取材を契機に、小学校再建を呼び掛けるクラウドファンディングを立ち上げた。教育制度拡充など課題は多いが「これがスタートになれば」と語る。「今の自分があるのも夢を持つことができたから。『こんな人になりたい』という当たり前の夢を彼らに持たせてあげたい」。子どもたちの笑顔がリングに上がる勇気となる。(小笠原大介東京通信員)

 とけし・こうへい 1988年、豊見城市出身。糸満高校卒業後に上京。プロ格闘家として総合格闘技(パンクラス)を経て2017年にラウェイへ転向。翌年の世界大会で優勝。現在は競技の普及とともに、ミャンマーの小学校再建計画を立ち上げ、クラウドファンディングを通じて支援を募っている(28日午後11時まで)。詳細は「ミャンマーの子供達の未来に光を」で検索。