沖縄県南風原(はえばる)町本部出身のピアニスト、下里豪志(たけし)さん(26)が2月、留学・活動拠点のイタリアから一時帰沖し、母校の南星中学校や南風原文化センターでコンサートを開いた。下里さんは欧州で活動の幅を広げており、「ヨーロッパの空気を届けたい。自分の経験を自分を育ててくれた場所で、育ててくれた人たちと共有したい」と話す。(南部報道部・高崎園子)

長年使っているピアノの前で笑顔を見せる下里豪志さん=南風原町本部の自宅

◆逆に驚いた

 下里さんは翔南小、南星中から開邦高校音楽コースに進み、上野学園大学(東京)の特待生に迎えられ、首席で卒業した。2017年から、著名ピアニストを輩出するイタリアの名門「イモラ音楽院」に留学。さまざまなコンクールに挑戦して上位入賞を果たし、イタリアやフランスのリサイタルなどに出演している。

 下里さんは性同一性障害だ。小学校のころからスカートをはいていた。友人、いとこら周りは女の子ばかりで「自分のセクシャリティー(性の在り方)に疑問を抱いたことがなかった」という。

 学校でいじめられたり、からかわれたりした経験はない。「周りの人のおかげだと思う。南風原の地域性もあるかも。ほどよい規模、顔が見える関係でいろんなところでつながっているから人を大切にするのでは」と分析する。

 高校に入学する時、女子の制服を着られるよう学校に掛け合った。制服選択制がない時代。県立高校で初めて女子の制服を着た男子だった。「女子の制服を着たかっただけ。新聞に大きく取り上げられたことに逆に驚いた」

◆欧州に拠点

 ピアノを始めたのは10歳のころ。友達が弾いているのを見て自分も弾いてみたいと思った。「人がそこに集う感じが好きだった。ピアノを通して人とつながれるところが好き」。沖縄の友人たちとは離れ離れだが、LINEやメールで頻繁に連絡を取り「音楽を続ける勇気をくれる」という。

 当面、チャンスの多いヨーロッパで腕を試す予定だが、沖縄への思いも強い。大学生のころから、県内で定期的にコンサートを開き、イタリアに拠点を移してからも年に2度ほど帰国し、県内外で演奏会を開く。

 南星中では2年連続で生徒たちに向け演奏。町出身の音楽家仲間と「故郷に灯(とも)る音の光」と銘打つ「くがにコンサート」も開いた。「クラシックコンサートに来てくれる人が増えたら」と願う。