1982~90年に連載された大友克洋さんのSF漫画「AKIRA」は、超能力や近未来の世界を描いた圧倒的な画力と世界観が魅力だ

▼88年には大友さん自らが監督したアニメ映画が公開され、国内外で「ジャパニメーション」と呼ばれるブームの先駆けとなった。この作品が今、再び注目されている

▼AKIRAの舞台は、第3次世界大戦から復興し、2020年の東京五輪開催を控えたネオ東京。作中にある「東京オリンピック開催迄あと147日 国民の力で成功させよう」という看板の描写には、「中止だ中止」と落書きされている

▼実際に、新型肺炎で「本当に中止か」との臆測も拡散している。感染拡大を止められない政府の対応には「事態を小さく見せようとし、水際で失敗した」などの批判がある。五輪への影響を恐れてなのか、後手後手の対応は否めない

▼安倍晋三首相は五輪招致の際、原発事故の汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」と発言して国内外から批判されたが、新型肺炎もコントロールできていない

▼国際オリンピック委員会の最古参委員は、事態が収束しなければ「中止を検討するだろう」としている。30年以上前の作品にある未来と現実の奇妙な一致は、五輪だけではなく原発問題や政治不信など今の日本が抱える問題を浮き彫りにする。(吉川毅)