社説

社説[中韓入国制限]説明なき判断に危うさ

2020年3月9日 07:30

 安倍晋三首相は新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、中国、韓国からの入国制限を強化すると表明した。

 発行済み査証(ビザ)を無効とする。検疫所長が指定する場所で2週間待機し、国内の公共交通機関を使用しないよう要請する。現地に滞在する日本人も対象だ。

 中韓からの入国に厳格な制限を設ける内容である。

 運用はきょう9日から開始し、3月末までの予定だ。

 中国は国内感染者を抑え込みつつある。日本は発生源となった湖北省や、浙江省からの入国はすでに制限していた。韓国も感染者が多い南東部の大邱市と慶尚北道清道郡に滞在歴のある外国人の入国も拒否していた。

 今回中国、韓国全体に広げて適用するのは、どんなエビデンス(科学的根拠)に基づいての判断なのだろうか。安倍首相から説明がない。

 2019年の中国人の入国者数は742万人。全体の26%を占め、国・地域別で最多である。韓国人は534万人で2位。同年の訪日外国人による旅行消費額は4兆8113億円で過去最高を記録した。中国が36・8%を占め、制限対象となる韓国などを合わせると計52・8%に上る。

 入国制限の強化で訪日客が激減するのは避けられないだろう。アジアの観光客に依存する地方の観光業者にとっては死活問題だ。

 ビジネス上の往来が途絶えれば、サプライチェーン(部品の調達・供給網)を通じて密接に結び付いている企業の経済活動も大打撃を受けるのは間違いない。

■    ■

 中韓の入国制限は、中国の習近平国家主席の国賓訪日延期が日中両政府から発表された直後だけに、中国に気を使いタイミングが後れたと言われても仕方がない。

 韓国は対抗措置として日本人に90日以内の短期滞在にはビザを免除してきた制度と、すでに発効されたビザの効力を停止する。日本と同じ9日から適用する。韓国は「不当な措置が事前の協議もなく取られたことは納得できない」と批判する。

 日韓関係は元徴用工問題などを巡り、新型コロナ発生前から戦後最悪といわれていたが、対立がさらに泥沼化しかねない。政治的な争いをしている場合ではない。感染の抑え込みで両国は連携をこそすべきである。文在寅大統領が日本の植民地支配への抵抗運動記念日に「共に危機を克服しよう」と協力を呼び掛けていただけに残念だ。

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 懸念されるのは安倍首相の政策決定過程が不透明で、説明がなく唐突なことだ。イベントの自粛要請、一斉休校要請も突然で混乱を招いた。安倍首相は今回も専門家会議から意見を聞いていない。

 新型コロナ対策が後手に回っていると批判されていることから安倍首相はリーダーシップを内外に印象付けたい狙いと、支持する保守層にアピールする思惑がありそうだ。

 国内では水際対策が突破され、経路不明の感染が広がっている。水際対策からシフトすべき段階だ。局面が変わっているのに、中韓の入国制限はちぐはぐ感が否めない。

 
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