新型コロナウイルス禍で普段とまるで違う3月。大相撲春場所は無観客開催となり、女子マラソンは沿道の歓声もまばらだった。閉塞感が社会を覆う時だからだろうか。苦難を乗り越えてきた姿が一層まぶしかった

那覇市の珊瑚舎スコーレ夜間中学校に84歳で入学した具志堅政雄さんが8日、卒業した。87歳の卒業生はこれまでで最高齢。学びは一生続き、いつからでも学び直せるのだと改めて思った

▼戦後まもなく父親を亡くし、代わりに働いた。いつか学校に通いたい。そう思い続け、数年前に夜間中学のことを知った時の喜びを「マジでびっくりしました」と表現した

▼在学中、脳梗塞などで2度倒れた。退院後、何もなかったかのように学校へと戻った。「今おかれている状況から少しでも前へ進めるよう、与えられた場所で自分のやれることを発揮することが大事」。卒業を祝う会で語った言葉に、はっとさせられる

▼「何かの手段としてではなく、学ぶことそのものに意味があることを知りました」と長女の京子さん(47)は言う。連れ合いを亡くして落ち込んだ政雄さんも見てきた。そこから一歩踏み出し、門出を迎えた姿に涙ぐんだ

▼最後の花道。年の離れたフリースクール高等部の卒業生や在校生に囲まれた。つえをつきながら前を見て歩く。こちらも背筋が伸びた。(大門雅子)