社説

社説 [「緊急事態宣言」法案] 国会関与は必須の条件

2020年3月13日 07:59

 終息の見通しが立たない新型コロナウイルス感染症について、世界保健機関(WHO)は11日、「パンデミック(世界的大流行)といえる」との認識を示した。

 同日、トランプ米大統領は感染拡大を食い止めるため、英国を除く欧州からの入国を30日間停止する措置をとった。

 世界の感染者数は約12万人、死者は約4700人に上っている。

 そんな中、首相の「緊急事態宣言」を可能にする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案がきょうにも成立する見通しだ。

 緊急事態宣言は、国民の生命および健康に著しく重大な被害を与える恐れや、国民生活、経済などに影響を及ぼす場合に発令される。

 だが、最も懸念されるのは、国民の私権制限につながりかねない点である。

 宣言されれば、都道府県知事は不要不急の外出自粛や学校休校、映画館など多く人が集まる興行施設の利用制限を要請、指示できることになる。医療機関が足りなくなった場合に臨時の施設を開設できるように、土地や建物を所有者の同意を得ずに使うことも認める。

 個人の権利の制限を広範に認めることで、国家の統制が強まる懸念が拭えない。

 与野党は、国会への事前報告などを盛り込んだ付帯決議を可決したが、国会の承認を経ない法の行使は立憲主義に反する。

 国会の関与と実質的同意を前提にするような仕組みの再検討を求めたい。

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 付帯決議には、国会への事前報告のほか(1)緊急事態宣言は専門的な知識に基づいて慎重に判断(2)施設の利用制限などを要請する際は経済的不利益を受ける者への十分な配慮(3)政府対応の客観的・科学的な検証-などが盛り込まれている。

 ただ、法的拘束力はなく、個人の権利の侵害につながりかねない事態を防ぐための担保にはなりえない。法案を支える重要事項を付帯決議に盛り込むのは望ましくない。

 そもそも緊急事態宣言の発令の要件も抽象的で、恣意(しい)的な運用を招く恐れもある。

 全国一斉の小中高校の休校要請や大規模なスポーツ・文化イベントの自粛など、安倍晋三首相が唐突な感染防止対策を打ち出したことで、現場に混乱と不信を引き起こした。

 同様に国民への十分な説明がなされないまま法が成立することに危機を感じる。

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 改正案は12日の衆院本会議で、与党と立憲民主、国民民主両党などの賛成多数で可決された。13日の参院本会議で成立する見通しだ。

 11日にあった衆院内閣委員会での実質審議はわずか3時間余だった。緊急事態とはいえ、社会全体に閉塞(へいそく)感をもたらしかねないことを念頭に、国会は最後まで議論を尽くしてほしい。

 当然ながら感染拡大防止の名の下に、法の「乱用」があってはならない。緊急事態だからこそ、より厳格に、主体的に監視を続けるのが立法府の役割だ。

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