タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

[木村草太の憲法の新手](124)コロナ報道「政府の名指し反論」に潜む3つの問題 授業フォローの対策も必要

2020年3月15日 09:38

 政府が憲法上の権利を尊重すべきなのは、感染症対策でも変わらない。新型コロナウイルス対策について、2点、指摘したい。

 第一に、報道に対する政府反論について。厚労省と内閣官房国際感染症対策調整室は、公式ツイッターを通じて、テレビ朝日の特定番組や、CNN、中央日報を名指しし、報道内容について反論した。

 こうした行為は言論弾圧ではないかとの批判に対して、菅義偉官房長官は、6日の記者会見で、「政府から必要な発信をすることが自由な論評を阻害することになるとは考えられません」とした。

 確かに、政府の反論は、命令や刑罰等の直接規制ではない。しかし、名指しでの反論には三つの問題がある。

 まず、政府が、特定の番組を名指しするのは、事実の訂正だけでなく、番組に対する敵意表明の意味を持つ。これは、言論萎縮(いしゅく)要因であり、表現の自由(憲法21条1項)の制約にあたる。

 もちろん、表現の自由も絶対無制約ではないが、憲法上の自由を制約するには根拠法が必要だ。しかし、今回の名指し反論には、それを行う要件などを定めた根拠法がない。

 また、表現の自由に対する規制は、より制限的でない他の選びうる手段がない場合にのみ許される。今回は、「名指しせずに、ただ事実を適示する」という、より制限的でない手段があるのも明らかだ。表現の自由に対する不当な制約であり、違憲と判断せざるを得ないだろう。

 次に、政府は、表現の自由だけでなく、差別されない権利(憲法14条1項)をも尊重する義務を負う。反論コメントを出すなら、全ての報道を同一基準で精査して行う必要がある。しかし、政府は、どのような基準で反論対象を選んだのか、全く説明していない。今回のやり方は、何らかの差別的意図に基づいて対象を選んだのではないか、と疑われてもやむを得ないだろう。

 
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