久米島町から、優良種雄牛「安福久」の血統として取引された和牛が、実際は父牛とDNAが異なっていたことが明らかになった。

 町内の家畜人工授精師が規定違反の種付けを繰り返したためだという。

 昨年6月以降、畜産農家から血統違いの指摘が複数回あったにもかかわらず、この間、事実は伏せられていた。

 子牛産地としての沖縄ブランドを大きく傷つける、あってはならない事態だ。

 和牛の生産は人工授精が一般的で、肉質の良い子牛を誕生させるには、血統が大事なポイントとなる。安福久はサシ(霜降り)の入りがよく、子牛は高値で取引されている。

 疑いのある牛のDNA鑑定によって、これまでにこの家畜人工授精師が交配を手掛けた10頭で血統違いが判明している。

 授精師は過去11年間で3千頭余りの交配に関わっており、調査が進めばもっと増えるかもしれない。血統違いの牛が繁殖用雌牛になっていたら、被害は孫世代以降にも拡大する。 

 同一発情期に授精する種雄牛は1頭のみとする和牛登録協会の規定に反し、異なる種雄牛の精液を使用した結果、血統矛盾が起きたとされる。

 授精師は家畜改良増殖法に基づく国家資格で、基本中の基本であるルールを知らなかったというのは、にわかには信じがたい。

 仮に故意ではないとしてもあまりにもずさんなやり方で、重大な過失といえる。

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 安福久と異なるDNAが検出され血統違いが最初に分かったのは昨年6月、農家からの報告によってだった。9月、10月、12月にも別の農家からDNA不一致が指摘されている。

 問題が深刻なのは、家畜市場を運営するJAおきなわが、その報告を受けながら、出荷農家や購買者に事実を伝えなかったことだ。通常通り競りを続けたのは、信頼を裏切る行為である。

 さらに農家に対する説明会では、外部に漏らさないよう、かん口令を敷いたというから、隠蔽(いんぺい)工作と受け取られても仕方がない。猛省が必要だ。

 この問題を県の担当課が把握したのは今年2月と遅く、玉城デニー知事への報告はほんの数日前だった。

 血統違いはほかの授精師が手掛けた4頭でも確認されている。授精師に免許を交付し指導監督する立場にある県も責任を免れない。

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 沖縄は全国第4位の子牛生産地だ。県の農業産出額に占める割合でも、肉用牛がサトウキビを抑えてトップにまで成長している。

 社会問題化した食品偽装事件では、一つの不祥事をきっかけに築き上げてきたブランドがもろくも崩れ去る場面を見てきた。  

 県には沖縄ブランドの信頼回復に向けて、当該授精師の人工交配で誕生した牛のDNA検査など徹底調査を求めたい。その上で全ての授精師を対象にルール順守のチェックなど管理体制強化を盛り込んだ再発防止策を示すべきだ。