県自立生活センター・イルカ代表の長位鈴子さん(57)の心には、20年以上前に言われ、突き刺さったままの言葉がある。娘が保育園児の頃、電動車いすで送迎中に通りすがりの車の中から投げつけられた。「税金泥棒。役にも立たないくせに」

▼娘の手前、気丈に振る舞いながらも悔しくて泣いた。「障がい者はいなくなればいい」。植松聖被告(30)が繰り返したむき出しの差別発言は、心をえぐった言葉と重なった

▼相模原市の知的障がい者施設で入所者ら45人を殺傷したとして、元職員の植松被告に死刑が言い渡された。戦後最悪とされる事件は、どのように差別意識が生まれたのか分からないままだ。第二の被告を出さないために、共生とは何かを考え続ける宿題が社会に課されたように思う

▼重傷を負った尾野一矢さん(47)は地域で暮らす準備を進めている。父剛志さん(76)は「障がいがあってもちゃんと生きていけることを身をもって伝えたい」と話した

▼長位さんは障がいの有無にかかわらず誰もが地域で暮らせるよう支援している。被告に同調するネットの意見にこう反論する。「生まれてきていけない命などなく、地域で暮らしては駄目な人もいない」

▼19人が犠牲になった事件は遠くの出来事ではない。風化させないよう「社会」という言葉を「一人一人」に置き換えてみる。(大門雅子)