管理職の課題

[成相裕幸ITmedia]

 会社の部下をいかに成長させるか――。そんな悩みを抱えている管理職も多いだろう。どのように部下が自らの長所や課題を見つけ、伸ばすことをサポートできるか。『ジャニーズは努力が9割』(新潮社)の著者、霜田明寛氏は数多くの優秀な人材を生み出してきたジャニーズ事務所の創始者、ジャニー喜多川氏の教育方法にヒントがあるという。

 霜田氏はSMAPに憧れアイドルを目指し、ジャニーズジュニアのオーディションを受けた「ジャニオタ男子」。ジャニーズジュニアになることはできなかったが、その経験を生かしプレゼン力をメソッドとしてまとめた就活本なども刊行している。共通するテーマは「持たざる人が最初から持っている人に勝つにはどうすればよいのか」。その実例として音楽番組に限らず、ミュージカル、映画、番組МCなどで活躍するジャニーズ所属のアイドルたちの努力の方法に可能性を見いだしている。

ジャニー喜多川氏の“後継者”としてジャニーズ事務所の副社長を務めている滝沢秀明氏(右、写真提供:ロイター)

 彼らを導いたジャニー氏はどのような態度や言葉によって人材を育成したのか。資生堂社員や教育事業に携わる人たち向けに実施された研修セミナーからその内容をお届けする。組織をマネジメントする管理職などビジネスパーソンにとって、部下の育成や優秀な人材の潜在能力を引き出すためのヒントになるはずだ。

霜田明寛(しもだ あきひろ)1985年東京都生まれ。東京学芸大学附属高等学校を経て、2009年早稲田大学商学部卒業。文化系WEBマガジン『チェリー』編集長。『マスコミ就活革命~普通の僕らの負けない就活術~』(早稲田経営出版)など、3作の就活・キャリア関連の著書がある。最新作は、ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川の人材育成術をまとめた『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)。日々の仕事や映画評、恋愛から学んだことなどを発信するネットラジオvoicy『霜田明寛 シモダフルデイズ』も話題に

もたない人間が「最初から持っている人間」に勝つには?

 僕はいままで、就活本を3冊出してきましたが、共通するのは「(才能を)もたざる人間が、最初からもって生まれた人間に勝つにはどうすればいいか」です。自分はすごい特技やスキルを何ももっていない。どうすればそんな人に勝てるようになるのか。その延長線上に、自分のようにもっていない人がジャニーズのようなすごい人に勝つには、という問題意識があったのですが、今テレビで活躍するジャニーズのタレントたちも実は元からすごい人たちではなく、努力を重ねてきた人なのではないか。そう思って書いたのが『ジャニーズは努力が9割』です。

 ジャニーズのタレントは「努力の天才」です。では彼らを育てた教育者としてのジャニー喜多川とはどのような人だったのか。一つ目は「人間性とやる気だけでジャニーズジュニアを選抜する」ことです。これは経営学者、ピーター・ドラッカーの「組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある」という言葉に重なります。

 僕がオーディションをうけたとき、Hey! Say! JUMPの山田涼介さんは小学5年生。「のちのちこの普通の男の子がスターになる」と、15年くらいかかって僕らは分かるわけですが、ジャニー氏はそれを見抜いていた。普通だった子たちがものすごいことをするようになる。それはジャニーズという組織にそうさせる仕組みがあるのではないか。そう思いました。

「凡人をして非凡なことを行わせる」仕組みがジャニーズ事務所にある(写真提供:ロイター)

分不相応なことを課して成長を促す

 ジャニー氏の仕事観について堂本光一さんは「仕事を仕事と思わせない」と言っています。ジャニーさんのスタイルは基本的に「好きだからやっている」。Sexy Zoneの佐藤勝利さんは「僕たちは『できません』とは言いません。いかに応えるかがジャニーズスピリット」、A.B.C-Zの橋本良亮さんは「『ユー、やっちゃないよ』は完全に試されてるんです。できる状態だから『ユー、やっちゃいなよ』じゃないんですよ。言われることによって、追い込まれる。それでできるようになるんです」とそれぞれ言っています。

 できそうなことを与えるのではなく、ちょっとできなさそうな「分不相応」なことを課して成長を促すのがジャニーズのスタイルなのかなと思います。

 ちなみに「できない」と言ってしまったのがV6の長野博さんです。「スケートボードできない?」とジャニー氏に聞かれて「できないよ!」と返しました。再び聞かれて「できないよ!」と返したら、自分を抜かしたグループ「スケートボーイズ」が結成され、これが後にSMAPとなります。この数年後、今度は「バレーボールやらない?」と誘いがきて、「やります」と言って結成されたのがV6ですね。

 「教育者」ジャニー喜多川とはどんな人だったのか。まず「2軍の監督」であると言えます。国分太一さんは「1軍がデビューしたグループだとすると、ジュニアという教育機関で2軍の選手たちをいかに成長させて世に出せる状態にもっていくかがジャニーさんの仕事だった」と言っています。さらにもう一つ、「個性を消さずに育てた人」です。

霜田氏が2月に実施した資生堂でのセミナーの様子