社説

社説 [小4虐待死 父に懲役16年] 教訓を生かさなければ

2020年3月20日 09:17

 千葉県野田市の自宅で小学4年の栗原心愛(みあ)さんを死亡させたとして傷害致死などの罪に問われた父勇一郎被告の裁判員裁判で、千葉地裁(前田巌裁判長)は懲役16年(求刑懲役18年)の判決を言い渡した。心愛さんへの虐待などで起訴された六つの罪全てを認定。これまでの児童虐待事件と比べて重い量刑を科した。

 被告は、傷害致死は争わないとする一方、心愛さんに食事を与えなかったり、一晩中立たせていたりしたという母の証言を次々と否定した。心愛さんが学校アンケートで「お父さんにぼう力を受けています」と書いたことについても「うそ」と言い切った。

 子どもを虐待する親の多くが、自らの暴力を認めず「しつけ」と称して正当化することを端的に見せた場面だった。こうした被告の説明について前田裁判長は「都合のいいところを述べて、事実と主張しているにすぎず、信用できない」として退けた。

 被告は2018年、県柏児童相談所が心愛さんを一時保護した後も、虐待がなかった証拠として「お父さんにたたかれたというのはうそ」という心愛さん直筆の書面を提示した。後に心愛さんは「父に書かされた」としている。

 しかし児相は当初から書面を疑問視しながら、心愛さんを自宅に帰した。市教育委員会の担当者は被告から迫られ、学校アンケートの写しを渡し、状況を悪化させた。

 判決で前田裁判長は「(心愛さんは)大人に、精いっぱい伝えようとしていた」と述べた。子どもの声に大人たちが耳を傾けなかったために命が奪われた事実を、重く受け止めなければならない。

■    ■

 千葉県に移り住む前に家族が住んだ糸満市も、心愛さんや周囲からのSOSをキャッチできなかった。

 市立小学校の友人は「お母さんがいないと、お父さんにパーでたたかれて痛い」と心愛さんに打ち明けられていたが、学校は気付けなかった。親族は、心愛さんが被告からどう喝を受けていることや母親へのDVについて相談していたが、被告から面談や家庭訪問を断られた市はそれ以上の対応をとらなかった。

 心愛さんの事件後、政府は、保護者が関係機関を避ける場合こそリスクが高いとみて、ためらわず一時保護するよう求めた。文部科学省は教員向けの児童虐待対応の手引を公表し、虐待の疑われる子どもが7日以上欠席した場合は関係機関と速やかに情報共有する新ルールを通知した。

■    ■

 しかし、その後も札幌市で虐待通告後の安全確認を怠り2歳女児が衰弱死、神戸市では今年2月、真夜中に児相を訪れた小6女児が追い返されるなど、大人たちの失態が続いている。

 児童虐待は深刻さを増している。全国の警察は昨年1年間に虐待事件で保護者ら2024人を摘発。心愛さんも含め54人が命を落とした。県内でも昨年、県警が児相に通告した児童虐待が1467人(暫定値)で、統計が残る07年以降過去最多となった。

 心愛さんが残した教訓を生かさなければ、悲劇はまた起きる。

 
 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気
沖縄タイムスのイチオシ