19世紀のフランスに実在した郵便配達員、シュヴァルが現代に生きていたら、「面白みが無さすぎる」「愛情表現ができない」、とすぐに離婚の危機を迎えそうだ。

シュヴァルの理想宮

 寡黙で不器用にしか生きられないシュヴァルが、妻にも娘にも愛情の表し方が分からず、おろおろする姿は何ともおかしくいとおしい。

 このいとおしさは、ほとんど言葉を発しない男があふれんばかりの愛情をその身体に宿しているのを、見るものが感じとるからだろう。

 妻もそんな夫の不足を不満には思うが、不安がらずに見守る。そしてシュヴァルはある日つまずいた風変わりな石をきっかけに、娘のための宮殿を造り始める。村中の笑いものになりながら。

 実話と聞いてもにわかには信じがたいお話。それでも全編を包む温かさは、次々と押し寄せるシュヴァルの苦難をも包み込んで、彼の人生を全肯定する。(スターシアターズ・榮慶子)

◇4月3日からパレットで上映