階段を上がり、ドアを開けると、パノラマの泡瀬干潟が目に飛び込んでくる。沖縄市の泡瀬干潟が一望でき、干潟の生物多様性を見守り、発信する拠点となってきた「博物館カフェ ウミエラ館」が4月中旬に閉館する

▼館長の屋良朝敏さん(70)が「地球の鼓動を感じてほしい」と、2011年4月に那覇市役所を定年退職後、退職金をつぎ込んでオープンさせた。かつて塩田があったとされる那覇市前島出身。「波之上で泳ぎ、魚を釣った。干潟の大切さがDNAにすり込まれている」と語る

▼約10年前、泡瀬干潟の観察会に初参加し、ミナミコメツキガニの群集に多様なサンゴ、海草類に魅了された。「こんなすごいところが埋め立てられるのか」と衝撃を受けた

▼埋め立てに反対する訴訟にも関わり、国の環境アセスメントの欺瞞(ぎまん)を指摘してきたが、沖合では着々と工事が進む。みるみる減っていく貝類や渡り鳥に「環境へのダメージは計り知れない」と顔をしかめる

▼「今あるものをいかに残すか。拠点はなくなるが、今後も見守る活動は続けたい」と屋良さん。ラムサール条約登録を目指し、引き続き行動する考え

▼「泡瀬と同じ轍(てつ)は踏まない」と毎週、辺野古にも通う。4月12日には観察会と「お別れ会」を開く。同館には干潟の豊かな自然への屋良さんの熱い思いが詰まっている。(石川亮太)