◆川の水

 「何が何だか分からない。まさか自分もそうなると思わなかった」。大城さん一家もうつぶせに寝かされ、大城さんは後頭部を打たれて意識を失った。気が付いた時には薄暗く、辺りを見渡すと、4歳だった三男邦夫さんは息絶えていた。叔父は首をつって自殺し、母と次男は大けがを負っていた。

 翌日、水が欲しくなり、近くの川の水を飲んだ。「自決で皆が死んだ血」だった。近くに落ちた艦砲の破片で足もやられたその日、米軍に捕まった。米兵の印象は、聞いた話とは違っていた。「全部うそだった」

 母は戦後、亡くなった邦夫さんが「子どもの中で一番頭が良かった」と繰り返した。それでも、あの「自決」を語ろうとはしなかった。

 「誰も責められんさ…」と大城さんは言葉を詰まらせる。「二度とあんなことはない方がいい。考えるのはそれだけよ」。75年前の悲しみを、静かに胸に抱え続ける。