「手榴弾(しゅりゅうだん)は私の一人の姉と担任の内間先生との間に落ちて爆発しました。先生は腰の辺りを砕かれ、姉は腹部をえぐり取られていました」

▼沖縄戦の際、座間味村で起きた「集団自決(強制集団死)」を生き延びた宮城恒彦さん(86)。自著「潮だまりの魚たち」で姉を失った体験を記している。他の体験者から聞き書きした証言集もこれまでに28冊となった。実相を伝える努力を惜しまない

▼沖縄戦で米軍が慶良間諸島に上陸してから75年の節目を迎えた。座間味・渡嘉敷両村の戦没者をまつる塔には、遺族らが訪れて静かに手を合わせた

▼2021年度からの中学校の社会科教科書検定で山川出版は「集団自決」に触れなかった。07年9月に開かれた県民大会の「決議を実現させる会」は声明を発表。「看過できない」と文科省と同社に是正を求める

▼宮城さんは軍の関与を含め「『集団自決』があったことが事実。教科書は触れるべきで、事実がゆがめられないか心配だ」と指摘。「怒りを通り越して悲しくなる」と憂う

▼沖縄戦の特徴は軍人より県民の犠牲者が多いことだ。投降を許さない日本軍の「軍官民共生共死」の考えのもと、住民は「集団自決」に追い込まれた。節目にこそ確認したい。史実から学び、伝え、教訓とすることこそが、現代に生きるわれわれの使命であるはずだ。(内間健)