自民党の河井案里参院議員=広島選挙区=が初当選した昨年7月の参院選を巡り、車上運動員(うぐいす嬢)に違法な報酬を支払ったとして広島地検は公選法違反(買収)の罪で案里氏の公設秘書ら2人を起訴した。ほかに起訴されたのは案里氏の夫、河井克行前法相=自民、衆院広島3区=の政策秘書。

 地検は案里氏の公設秘書は連座制が適用される組織的選挙運動管理者に当たるとみて迅速に審理する「百日裁判」を広島地裁に申し立てた。

 連座制は候補者と一定の関係にある人物が買収など悪質な選挙違反事件で禁錮以上の刑が確定し、広島高検が提起する行政訴訟で適用対象とされれば当選が無効となる。同一選挙区からの立候補も5年間禁止される。

 地検の捜査は進行中である。地検が克行氏の後援会幹部や広島県議らを任意聴取していることが28日に明らかになったからだ。地検は後援会関係者らに金を配布し、票の取りまとめを依頼した買収行為があったとの見方を強めている。夫妻の関与を見極めているとみられる。

 起訴状によると両秘書は昨年7月19~23日ごろ、14回にわたり選挙事務所など6カ所で運動員14人に計204万円を手渡した。法定上限の日当1万5千円の倍に当たる3万円を支払ったとされる。

 参院選前の案里氏の県議選、克行氏の衆院選でも常態化していたとみられている。

 買収行為によって公正であるべき選挙がゆがめられては民主主義の根幹が揺らぐ。

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 案里氏陣営を指揮していたのは克行氏である。克行氏が選挙運動を依頼した男性会社員に10万円を手渡したり、案里氏が支部長を務める自民党支部が約86万円を入金したりした疑惑も浮上している。

 自民党本部は参院選公示前に案里氏側に破格の1億5千万円を入金している。現職の10倍に相当する巨額な資金で、一連の公選法違反疑惑はこれが原資になった可能性がある。案里氏は「いただきましたが、違法ではありません」と受領を認めている。地検は巨額資金の使途を徹底的に解明する必要がある。

 同選挙では表向き自民党が2議席独占を狙い、新人の案里氏とベテラン現職を擁立したが地元は分裂。現職は落選した。克行氏は安倍晋三首相や菅義偉官房長官と近く、安倍首相自ら応援演説に駆け付けるなど異例の応援ぶりだった。てこ入れした安倍首相や菅官房長官ら自民党の責任も問われなければならない。

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 公設秘書が起訴された案里氏と政策秘書が起訴された克行氏とも今なお自民党にとどまっている。自民党本部が説明責任を求めず、両氏のけじめをつけないのはなぜだろうか。理解できない。

 秘書の起訴を受け両氏は「捜査内容の詳細は把握しておらず、刑事裁判を注視したい」などとコメントを出しただけだ。自らの口から説明することはなかった。

 疑惑が昨年10月に報じられ克行氏は法相を辞任したが、両氏は説明責任から逃げ続けている。説明できないのならば議員辞職するしかない。