エープリルフールは春休みと重なる。神戸の親戚宅を訪れていた小学生のころ、うその回数をいとこと競い合った。「あした地球が爆発するんだよ」。おばは「あら大変」「まあそうなの」と、いちいち真に受けてくれた

▼たわいない子どもの一言だが、周囲の大人がしっかり向き合えば、温かく親密な記憶として残る。振り返れば、幼いなりに人格を尊重してもらえた喜びがあったのだと思う

▼うそが許される日の起源は諸説ある。16世紀にフランスが暦の新年を4月から1月に変え、反発した庶民が旧新年に騒ぐ習慣が定着したとの説も。ジョークに知恵を絞る英国の大衆紙はある年「仏大統領が、妻より背を伸ばす手術を受けた」と報じた

▼日付を問わず、陰湿に語り継がれるうそもある。1950年代に発覚した水俣病。水俣病資料館によると当時、救済を求める患者に「カネ目当て」と非難が浴びせられた

名護市辺野古で新基地建設に反対する市民も、同じ中傷にさらされる。水俣以前から連綿と続くのだろう。定型的な言葉で異議をおとしめる行為は、発する側の心を映す気がする

▼遊び心のあるうそなら、ほほ笑ましい。英紙「デイリー・メール」は2014年、国旗が変わるという大スクープを載せた。各行の頭文字をつなげると「april(エープリル) fool(フール)」。言葉遊びにセンスが光る。(吉田央)