新型コロナウイルスの感染拡大による経営悪化から、新卒者の内定が取り消されるケースが表面化している。県内でも観光関連企業に就職予定だった学生2人の内定取り消しが判明した。

 希望の春、胸をふくらませ社会人としてスタートを切るはずだった学生の心情を思うと胸が痛む。経営者は、雇用維持に全力を尽くすという大原則に立ち返り、若者の将来を大きく変えてしまう内定取り消しの回避に動くべきだ。

 厚生労働省によると、今春高校や大学を卒業した生徒・学生の感染拡大による内定取り消し数は3月末時点で、全国で23社、58人に上る。卸売りや小売り、宿泊、飲食業で目立つ。

 沖縄労働局のまとめでは、県内は1事業者2人。さらに入社日延期が派遣業などのサービス業と、宿泊・飲食サービス業の2事業所で合わせて34人となっている。

 内定は解約権を留保した「就労始期付労働契約」に当たり、合理的で社会通念上相当とみられる理由がなければ、取り消しは無効とされる。解約権が、行使できるのは学校を卒業できないといった場合などに限定され、コロナの影響による不況は、直ちにその事由にはならない。

 賃金の一部を助成する雇用調整助成金は、新入社員にも適用される。

 国は解雇者を出さない場合の助成率を中小企業は90%に、大企業は75%に引き上げた。経営者は、助成金を最大限活用し、雇用と暮らしを守るべきだ。

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 雇用をめぐる環境は厳しさを増している。

 日本銀行那覇支店が発表した3月の県内企業短期経済観測調査で、業況判断指数は、

東日本大震災後以来、8年ぶりにマイナスとなった。

 企業が、短期的な経営判断に陥れば、来年春以降の採用を大幅に抑制する動きにもつながりかねない。

 教訓とすべきは、バブル崩壊後の1990年代半ば以降に起きた極端な就職難だ。就職氷河期とも呼ばれ、非正規雇用増加が進む大きな要因になった。

 30代半ばから40代半ばの世代が不安定な雇用環境に苦しみ、正社員と非正規の格差という社会のひずみとなって、今に続いている。

 派遣切りや雇い止めが社会不安を招いた過去の教訓を忘れてはならない。弱い立場におかれた非正規雇用者が、労働者全体の約4割を占めており、一層の支援策が必要だ。

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 雇用を守るために、観光関連やイベントなど自粛要請の影響を大きく受けた業界への手厚い支援や補償も求められる。

 政府は4月上旬に決定する緊急経済対策で、売り上げが急減しているフリーランスを含む個人事業主に対する助成金を検討する。リーマンショック時の約56兆円を上回る規模となる見通しだ。

 感染の広がりを食い止める対策とともに、生活の基盤である雇用を守るため、企業の資金繰り支援強化や中小事業者向け給付金制度の創設をはじめ、スピード感を持った大胆な対策が求められている。