農業が盛んな石垣市で、豊かな自然環境ゆえに農家の頭を悩ませている課題がある。有害鳥獣の農作物被害だ。主にカラス、イノシシ、キジ、クジャクで2018年度の被害額は約348万円。市は猟友会と連携して対策に当たっているが、被害と駆除の「いたちごっこ」が続く。打開に向けて市は今年2月、被害額の半数超を占めるイノシシに狙いを定めてICT(情報通信技術)を活用した大型の囲い式わなを試験導入した。遠隔操作で群れごとの捕獲を目指す。(八重山支局・粟国祥輔)

イノシシを遠隔操作で捕獲する実証実験に向けて設置した大型のICTわな=2月26日、石垣島北部(市農政経済課提供)

 市の16年度の農業産出額は約116億円で八重山全体の8割弱を占める。肉用牛は県内最大の約70億円。サトウキビやパイナップルも県内有数の産地だ。

 有害鳥獣のうちキジとクジャクは外来種。カラスを加えた3種は主にパインや野菜、イノシシはサトウキビやパインを食い荒らす。 17年度の被害額は約176万円と前年度から半減したが、18年度には再び2倍近く悪化した。一方、18年度の駆除数はカラス856羽、イノシシ219頭、キジ1191羽、クジャク663羽で3年連続で増加。市農政経済課は「農家が未申請のケースも多い。捕獲数は増えており、現在の被害額は『氷山の一角』だ」と指摘する。

■被害額の62%

 突出して大きな被害を与えるのがイノシシだ。18年度は被害額の約62%を占め、うち約42%が基幹作物のサトウキビに当たる。1回の侵入で農場の3~10%に損害が出るとされる。農家は市を通して地元猟友会に駆除を依頼しているが、効果は一時的だ。

 別の対策として侵入を防ぐ電気柵もある。イノシシは初めて見るものを鼻で触れる習性があり、電気ショックを与えて撃退する。ただ草が触れても漏電するため、定期的な雑草除去が不可欠。電池交換も必要だ。

 市は昨年100基を導入し農家に貸し出したが、効果は道半ば。懸念していた漏電による電圧低下や電池切れで侵入を許すなど、維持管理の面で課題を残した。被害に苦しむ農家の男性(72)は「管理に手間が掛かり過ぎる。このままではイノシシのためにキビを作っているようなものだ」と嘆く。

■スマホで操作

 1年間の実証実験に取り組むICTわなは最新の猟具だ。国などの鳥獣被害防止総合対策事業で予算は200万円。特に被害が大きい島北部の農家の協力を得て、農場の一角に6メートル四方を金網で囲ったわなを設置した。幅約1メートルのゲートからイノシシが入ってくるとセンサーとカメラが反応。映像がスマートフォンに送られ、遠隔操作でゲートを閉じて捕獲する。

 当面は餌となる米ぬかを置いておびき寄せる。開始1カ月で中に入る様子が確認されているが、今はまだ捕獲せずあえて食べさせている。同課の多宇克顕主事は「イノシシは頭が良い。警戒心を解くことが大事」と語る。

 多宇主事によると、親など3~6頭の群れでやってくる。親は子を実験台に使い、安全を確認してから餌を食べる。もし1頭でもわなに掛かったら別の個体は避けるようになるといい、「群れで来たものは群れごと捕まえる必要がある。農家の所得と営農意欲を守るために何としても成功させたい」と力を込めた。