「母なる証明」は、今から10年も前に公開された作品。いまだ、あの時感じた緊張と笑いと興奮と絶望と喜びを、身体が覚えている。

母なる証明

 我が子が殺人罪で逮捕され、その無実を証明するため奮闘する母親の異常なまでの愛を描いた本作は、恐ろしいことに、母の愛を試すようなことばかり起こる。

 とにかく無条件に息子を愛する母は、無実を証明するために全身全霊を注ぐ。しかし、無情にも「無実じゃないかもしれない」証拠に出合うばかり。信じることが愛なのか、見なかったことにするのが愛なのか。

 無垢(むく)にも、悪魔にも見える、なんとも不穏な息子を演じるウォンビンの演技もたまらなく刺激的。

 最後、母親に道を指し示すのは、倫理でも道徳でもない。母性だ。ふとタイトルを思い出し、ぞっとする。ポン・ジュノ監督はホント天才。すごい。

(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場であすから