親による体罰禁止を明記した県の「子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」が1日、施行された。同様に体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法も1日から施行されている。 

 「しつけ」と称した体罰がエスカレートし、幼い命が奪われる悲しい事件が相次いでいる。条例にも改正法にも罰則規定がなく実効性が問われるが、それでも子どもの権利を全力で守っていこうという社会の決断として評価したい。

 条例は前文で「子どもは一人の人間として、独立の人格を持った権利の主体として尊重されなければならない」とうたい、「子どもの権利の侵害の中でも虐待は成長に重大な影響を与える」と指摘する。

 体罰禁止は保護者の責務と明記し、「子どもが苦痛を受けているかどうかを問わず、体罰を加える行為、心身に苦痛を与える行為を行ってはならない」と定める。

 親世代の中にはたたかれて育ったという人も多い。体罰を容認する空気が残る中、それはしつけではなく、明らかに体罰だと書き込み、許されないとの意思を強く示した意義は小さくない。

 知事が年度ごとに虐待防止施策の実施状況を公表し、県社会福祉審議会の意見を聞くという項目を盛り込んだのは県が初めてだ。  

 「理念規定」に実効性を持たせるためにも、条例を具現化する施策と、旗振り役である県のリーダーシップが重要となる。

■    ■

 2017年夏まで糸満市で暮らしていた栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が死亡した事件などを契機に、県は児童虐待に関する万国津梁会議を立ち上げ、議論を重ねてきた。

 心愛さんの事件で糸満市要保護児童対策地域協議会の検証報告は「本人から話を聞けていない」「転出先に虐待情報を伝えていない」といった課題を挙げている。

 千葉県野田市へ転居した心愛さんは、学校のアンケートで父親の暴力を訴えていた。勇気を振り絞ってSOSを発信したにもかかわらず、最悪の結果に至ってしまったのだ。

 県条例は、子ども自らが行動するための支援として情報の提供、相談しやすい体制の整備に触れている。

 どんな時も子どもの側に立ち、何が何でも守るという大人の姿勢が伝わらなければ、声は上げられない。

 子どもにも分かりやすく解説したパンフレットを作成するなど、条例の周知にも努めてもらいたい。 

■    ■

 有識者でつくる万国津梁会議の提言もあり、条例は子どもの権利全般を保障する形をとっている。

 子どもの権利の定義も「虐待から守られること」のほか、「能力が十分に発揮されること」「自己の意見を表明すること」などと規定。ただ子どもの権利に関する部分は急ごしらえの印象で、内容も抽象的だ。

 施行をスタートラインとし、子どもの意見を尊重する仕組みづくりなど条例のブラッシュアップを求めたい。