島の名物「伊良部そば」を広めたい-。宮古島市伊良部長浜の集落にある古民家風の内装の店内は、優しい時間が流れ、くつろぐにはもってこい。コシがあるのに、もちもち感が癖になる自家製手打ち麺があっさりのだしにからむ。

 人気は島特産のカツオのなまり節、骨付き肉が入った「伊良部そば」(580円)と、手作りのゆし豆腐と軟骨ソーキ、三枚肉がぜいたくな「かめそば」(650円)。伊良部そばは、だしにもなまり節を使い、風味が一味変わる。ご飯ものや小鉢などが付いたセット(プラス250円)のほか、佐良浜港で取れた新鮮なマグロのにぎりずしもある。

 店主の安仁屋政之さん(33)は那覇市出身。妻の夏貴さん(32)の父で伊良部出身の佐和田博光さん(57)の実家を改装した。義理の祖母のカメ子さんが亡くなり、数年間空き家だったが、1年4カ月前、那覇市で飲食関係の企業に勤めていた安仁屋さんが、この場所での独立を決めた。

 改装中だったころ、夜に親族が集まり晩酌していると、玄関口で「カサカサカサ…」と物音がした。辺りを探ると、1匹のリクガメ。「おばぁも開店を喜んでくれるのかな」。店名を「かめ」にすることに決めた。玄関口の表札「佐和田恵正 カメ子」もそのままにしてある。

 安仁屋さんは6月にも製麺所を開き、「伊良部そば」をブランド化、島外にも広げたいという。1月末に伊良部大橋が開通し、口コミなどで店の人気も広まりつつある。

 「昔ながらの場所で、島のここでしか食べることができない、こだわりの味を提供し続けたい」と安仁屋さん。伊良部そばのさらなる認知度アップを目指し、厨房(ちゅうぼう)に立つ。(宮古支局・新垣亮)