見渡す限りのテッポウユリが風に吹かれて揺れていた。群青の海の大パノラマを背に、連なる白い花弁が美しい。伊江島北海岸のリリーフィールド公園

▼今頃は25年目を迎えたゆり祭りでにぎわっているはずだった。こちらもコロナで早々に中止が決まったが、一目でも見ようと人は集まる。かくも美しいのがこの景色だが、ウイルスまで招きかねないと、村は花を摘み取ることを決めた

▼パキッ、パキッと首根っこを折る度に聞こえる音が痛々しい。「花はもちろん、見てもらうことすらかなわなかったつぼみには、もう申し訳なくて」。花を管理している玉木伸治さん(44)が嘆く

▼この公園では、季節が終わる6月、全ての球根を掘り起こして土作りに入る。球根は温度管理し、秋には大きさをそろえて区画ごとに植え直す。春の開花まで、ネットを張って風から守る

▼村長の島袋秀幸さんに「花をもぎ取るのは忍びない」とこぼしたら「『摘み取る』と言って」と笑い話になった。球根に養分を集める摘花でもあり、来年は倍も美しい花を咲かせてくれるはずだと

▼テッポウユリは原産地にちなんで琉球百合(リュウキュウユリ)の別名を持つ。欧州の植物学者に紹介され、いつしかキリストの復活を祝う祭りの象徴になった。どうか来年は、人々のウイルスの克服をも祝って咲き乱れていてほしい。(粟国雄一郎)