米軍普天間飛行場から、発がん性が指摘されている有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)を含む泡消火剤が大量に漏出した事故を受け、国、県、宜野湾市の3者による基地内立ち入り調査が実施された。日米地位協定の環境補足協定を初適用。しかし米軍は泡消火剤が染み込んだとみられる土壌のサンプリング調査を拒否し、3者は事実上、米軍が土壌をはぎ取る作業を見守るだけだった。これが「調査」と呼べるのか甚だ疑問だ。

 防衛省によると、米軍は「流出経路は全てコンクリートに覆われており、芝生には浸透していない」と説明している。だが土壌の調査が認められないのなら、日本側による検証は不可能だ。採取拒否は「証拠隠し」のそしりを免れない。

 拒否の理由について米側は「日米間の調整が整わなかった」とするが、3者は土壌のサンプリング調査を申請しており、米側が認めなかったことは明らかだ。基地内の土壌調査は、協定締結時の日米合同委員会で手続きが定められているにもかかわらず、実現しなかったことになる。結局、米側の同意が得られなければ必要な調査もできないという協定の根本的な欠陥が露呈した。

 環境補足協定は2014年、環境調査などに関する規定のない日米地位協定を補足するため合意された。

 普天間飛行場の5年以内の運用停止にあわせて、当時の仲井真弘多知事が返還に向けた現地調査の必要性を主張し基地内立ち入り調査を要請。政府がそれに応えた形で米側の合意を取り付けた「画期的な協定」との触れ込みだった。

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 一方、当初から「米軍の運用を妨げない方法によってのみ行うことができる」との規定により、裁量は米軍にあり運用は限定的とみられていた。米側の裁量でいかようにでもなる日米地位協定の問題を埋めるものではなく、政府によるアリバイづくりだったと言うほかない。

 河野太郎防衛相は泡消火剤が流れ込んだ排水溝のサンプリング調査で土壌汚染の程度は把握できるとし、今回の立ち入り調査の必要性には消極的な考えを示していた。米側の拒否をあらかじめ想定していた可能性もある。

 県内ではこれまでも普天間飛行場をはじめ米軍嘉手納基地や金武レッドビーチ訓練場水域、キャンプ・ハンセン周辺の水源や河川、井戸などでPFOSなどの有機フッ素化合物が高濃度で検出されている。各地の米軍基地から泡消火剤などが漏れ出ている危険性は高い。

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 有機フッ素化合物は自然環境ではほとんど分解されない。地中に残っていれば地下水を汚染し続けることになり深刻だ。汚染源の確定と、土壌にどの程度浸透しているか、またどの範囲まで影響が及んでいるかの調査は欠かせない。

 今回の漏出事故では14万リットルもの泡消火剤が流れ出し、普天間飛行場周辺の民間地では広範囲に泡が飛ぶ様子も目撃された。基地外の土壌調査も必要だ。