社説

社説[コロナ 文化も直撃]灯絶やさない具体策を

2020年4月27日 09:08

 春の風物詩として親しまれてきた総合美術展「沖展」が今年は取りやめとなった。ゴールデンウイークににぎわうはずだった伝統の「那覇ハーリー」も中止が決まっている。

 新型コロナウイルス対策として、政府が大規模イベントの自粛を要請してから約2カ月。美術展、伝統芸能公演、コンサートなどの多くが中止や延期となり、芸術文化に関わる人たちが大打撃を受けている。

 県芸能関連協議会(沖芸連)が実施した「沖縄文化・芸能活動への影響に関する調査」によると、2~4月に予定していた公演の中止・延期は「あった」と答えた人が9割近くに上った。

 出演料などの損失額は1億2560万円余で、3月単月では1人当たり26万円を超えた。回答が約270件と限られた緊急ウェブ調査のため、はじきだされた損失は一部とみるべきだろう。自粛の出口が見えない中、被害はさらに膨らむことが予想される。

 調査では、この状態が5月まで続けばトータルで4割近くが「生活が維持できなくなる」とも答えている。

 「収入が一気に減り生活できない」「収益がない上に会場キャンセル料の支払いというダブルパンチ」「今の状況ではバイトを探すのも難しい」。自由回答のコメントはどれも悲鳴に近い。

 感染拡大や医療崩壊を防ぐにはやむを得ない対応とはいえ、担い手であるアーティストたちの危機は、芸術文化活動の存続をも揺るがしかねない。

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 安倍晋三首相は3月28日の記者会見で「文化、芸術、スポーツの灯が消えてしまっては、復活させるのは大変だと重々承知している」と語った。

 灯を絶やさないためには自粛要請と補償はセットであるべきだ。だが政府は個別補償には否定的である。

 示された支援策は、他業種も対象の融資制度や給付金などで、契約書を交わさないといった業界の慣例から減収の証明が難しいなど使いにくい面もあるという。

 対照的なのは、文化産業に携わるフリーランスや小規模事業者に約6千億円の財政支援を表明したドイツの対策である。英国でも公的支援団体が芸術家や劇場への資金注入を進める。

 諸外国に比べ芸術文化に特化した対策の乏しさは、文化行政の弱さを物語っているようだ。

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 沖芸連の調査の自由回答欄には「アーティストの存在は現代社会においてどんな役割があるのか」と問い掛ける言葉もあった。

 今回の自粛要請の中で不要不急と芸術文化が併せて語られたことへ、釈然としない思いを抱いた人は多い。

 県内の芸能関係者は、県に対し支援を求める要望書を提出している。芸能や文化がどれほど県民の心を癒やし、潤してきたか。沖縄の戦後復興の歩みを振り返れば言わずとも分かることだ。

 国や県には危機を乗り越えるための具体策を示してもらいたい。

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