社説

社説[コロナ禍と憲法]守るべき価値見失うな

2020年5月3日 11:18

 新型コロナウイルスの感染拡大と、出口の見えない自粛生活で、多くの人たちが精神的にも金銭的にも、切羽詰まった生活を強いられている。

 コロナ禍の負担は、普段、かつかつの生活を余儀なくされている人々に、より重くのしかかる。格差は拡大する一方だ。

 休業要請、外出自粛要請の陰で、感染者に対する差別や偏見、誹謗(ひぼう)中傷、営業する業者に対する監視や嫌がらせ、同調圧力、家庭内の児童虐待やDVなどが全国各地で相次いでいる。

 ネット上では「自粛警察」という戦時を思い起こさせるような忌まわしい響きの言葉まで飛びかっている。

 きょう3日は憲法記念日。憲法施行から73年、沖縄に憲法が適用されてから48年を迎える。

 私権制限を含む緊急事態宣言がさらに1カ月、延長されようとしている今、あらためて憲法の意義を確認し直す必要性を痛感する。

 憲法11条は基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と定める。13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と、個人の尊厳を高々と掲げている。

 13条は後段で、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とも指摘している。

 憲法は、政府に対し、国民の命を守り個人の自由と権利を保障することを明確に求めているのである。だが、この条文が現実の政策に生かされているとは言い難い。

■    ■

 私権の制限、行動の自由の制約は、憲法の根幹に触れる問題である。

 ドイツのメルケル首相はテレビ演説で、「このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化される」と歴史体験を振り返って指摘した。

 その上で、「しかし、それは今、命を救うために不可欠だ」と述べ、国民の協力を求めるとともに、雇用を守るためできるだけのことをする、とも明言した。

 だが、緊急事態宣言を発した安倍晋三首相からは、国民を納得させるメッセージは聞けなかった。

 目玉の支援策も閣議決定後に予算案を組み替え「一律10万円給付」を盛り込むなど一貫性のなさをさらけ出した。安倍首相が、国民を納得させ、鼓舞するようなメッセージを打ち出せないのは、支援策があまりにも遅く不十分な上に、首相個人に対する国民の信頼が欠けているからだ。

■    ■

 自民党の中には、今回の緊急事態宣言と憲法への緊急事態条項新設を絡め、憲法改正の機運を高めよう、という動きも目に付く。

 だが、緊急事態宣言と緊急事態条項の新設とは、何の関係もない。実効性のある支援策が一日も早く求められているこの時期に、このような発言を弄(ろう)するとは、公党の見識が疑われる。

 憲法12条は「自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定めている。それを念頭に置いたコロナ対策が必要だ。

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